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二子山(1556m) 袈裟丸山群の東にひっそりたたずむ不遇の山
(1999−10−24)
袈裟丸山塊の東に渡良瀬川に向けて派生する二子山の存在を知ったのは30年ほど前、袈裟丸山そのものが遙かな山であった時代です。かつてはしっかりした尾根道があったのですが、いつしか道のない山になったと聞くようになりました。もやっとしたあこがれの気持ちはそのままに、その後、袈裟丸山には幾度となく通っていますが、いずれもヤシオツツジやシャクナゲの華やかな時期ばかりでなかなか藪山に行こうという気持ちにならずにいました。秋の空の抜けるような日、やっと念願の山頂を踏むことができました。

(2006−4−21)
オオノ沢左岸の岩稜に登った折り、時間の余裕があったので二子山まで脚を延ばしました。二子山はその名の通り双耳峰です。前回はその片割れだけで引き返してしまいましたが、今回はその宿題を片付けるつもりでした。ところが、予想以上の素晴らしさ、本峰の南峰だけで引き返してはこの山の魅力は半減どころか登ったことになりません。双耳峰鞍部の景観といい、北峰の展望といい、藪山の魅力を凝縮した山でした。

(一般ハイキングコースではありません。)

関連ページ
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前袈裟丸山東南尾根周回
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袈裟丸山下の滝沢左岸尾根
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【日程】 1999年10月24日
2006年4月22日
【山域】 足尾
【天候】 快晴
【地図】 1/25000袈裟丸山
【アクセス】 国道122号を草木ダム先の沢入で寝釈迦の道路案内に従って左折。林道を途中で塔ノ沢への道を分けてそのまま登って折場登山口。
【駐車地】 登山口に駐車広場
【コース】 1999-10-24 登山口 - ツツジ平 - 賽の河原 - 分岐 - 二子山南峰 (往復)
2006-4-22 ツツジ平 - 賽の河原 - 分岐 - 二子山南峰 - 二子山北峰 (往復)
実行程約1時間強 ベテラン向き

   寂しい二子山頂上

【メモ】 (1999−10−24)
分岐まで:

折場口からつつじ平、賽の河原までは袈裟丸山弓の手コースを参照して下さい。
http://www.kimurass.co.jp/yuminote.htm
抜けるような秋の空、弓の手コースの笹原の緑が目にしみます。
登路は昨年まで途中の水場から右に樹林帯へコースを取っていましたのでそのつもりで旧コースを歩きましたが、いつのまにか笹尾根を直進するコースが開かれてそちらの方が歩きやすくなっていました。(水場は経由しません。)
つつじ平や賽の河原は春のつつじの艶やかな季節とは違って冷たい風が吹き抜けて寂しい景色です。

二子山への分岐を見つけるのがこのコース唯一の難しいところ:
賽の河原から小丸山に向けてだらだらと登ると昔の防火帯らしき溝地を認めることができます。ここに「小丸山1.2K 賽の河原0.5K」の立派な標識が建っています。この標識の脇が二子山への入山点、東に向かったわずかな踏み跡が見つけられればOKです。踏み跡が判らなくても強引に藪を突けば防火帯の跡の溝地が東に向かってはっきりと延びています。
これが不安ならもう一つ手前にも入山点があります。賽の河原から上がってきて右手に下草のきれいな落葉松林があることに気づいたはずです。私は「おとぎの落葉松林」と呼んでいますが、7人のこびとが出て来そうなそんな雰囲気の林です。この林の草付きを斜めに上っていけば緩やかな稜線に出て防火帯に気づくはずです。あくまで草付きを歩き笹原に踏み込まないようにしましょう。
防火帯には赤テープが程良い間隔でつけられていてそのうち踏み跡もはっきりしてきます。かなり歩かれているようです。

尾根道は静けさが魅力:
一歩この尾根に踏み込むと人気の袈裟丸山の一角とは思えないほど野生の雰囲気がいっぱい、この山域本来の姿を見せてくれます。鹿が至近で鋭い警戒の鳴き声を発して走り去りました。(袈裟丸一帯では静かに一人歩きすると必ず野生生物に出遭います。林道ではカモシカにも遭いました。)
コースをびっしりと埋めるミヤコザサは雪が少ないせいか丈が短く歩くにはなんの苦労もありません。途中、雰囲気のいいダケカンバの林がありました。
一カ所だけ迷いやすそうな平坦な高みがあります。ここでは(特に帰路に)コンパスが必要です。
一旦下って登り返すとダケカンバとミズナラの林に包まれた寂しい頂上、立木にかかった山名板がなければそれと判らないかもしれません。でもそこがいかにも足尾の山らしくなかなか好ましい雰囲気です。
踏み跡はさらにかすかになって先に続いています。このまま進みたいのですが車を弓の手登山口に置いてきているので今日は残念ながらここまで。
頂上からは木の間越しになりますが男体山や中禅寺湖南岸の山々そして足尾の庚申山、鋸連峰、皇海山などが間近に眺められます。右奥に岩の張出しがあり、そこからは南東に草木湖や安蘇の山々も眺められます。ここは寝釈迦の真上にあたりますので目の下には深い自然林の谷が広がっています。

帰路:
平坦な尾根で目標がありませんから帰りはちょっと迷いそうな箇所もあります。コンパスを片手に歩くのがいいかもしれません。
途中、なんとご夫婦連れのハイカーに遭遇、藪好きの同好の士が、と思ったら袈裟丸を目指して登って来たが寝釈迦の先から迷い込んでしまったという話。この尾根に登りつき行きつ戻りつ3時間も歩いているとのこと。どうすればあの1本道で迷えるかのと訝りながら登山道まで案内して別れましたが、北側の餅が瀬川の谷に迷い込まなくて幸いでした。

長年のあこがれから気合いを入れて来たのに、思いのほかあっけなく登れてしまってなんだか物足りないので、もう一つ前々から考えていたコース(弓の手の笹原)を歩いてから帰りました。

(2006−5−21)
変わらぬ二子山の道:
賽の河原先、おとぎの落葉松林を斜めに突っ切り尾根の防火帯に出て、あとは一本道。
秋と違い、落葉松の新緑が目にまぶしく、所々にアカヤシオも咲いて寂しさはありません。山頂直前の右手南斜面に桜の大木がありました。花付きがよく花色の濃い種類で、あたりがぱっと明るく感じられます。
二子山南峰は昔のままひっそりとしていました。山頂から東に突き出した岩場からは安蘇山塊が見通せ、また草木湖を見下ろすことができます。

北峰はほんの隣ですがけっこうたいへん:
本峰の南峰から樹木に遮られて北峰の姿ははっきりとはわかりません。なんか山の輪郭が見えるかなぁ、という程度。地形図頼りでそれらしい方向に急な斜面を一気に下ります。最初のうちはわずかになだらかな尾根上の地形で防火帯の続きになっているようです。その防火帯は右方向に(たぶん)県境尾根通しに続いているようですからそれは右に見送ることになります。防火帯を見送ると逆落としの急下降となります。帰路の登り返しが思いやられる下りです。やがて草付きの落葉松林の鞍部に達します。その草付きは新緑の落葉松の中で所々花崗岩の大岩を配して鞍部の右方向になだらかに広がっています。一息入れるには恰好の景観ポイントです。
鞍部からもまた急な斜面ですが、こちらはあっという間で頂上に達することができます。

日光、足尾の展望台、台石山:
台石山頂上
山頂には大岩が並んでいます。風化した花崗岩の砂(ごんべ)もあり清潔な感じのピークです。南峰からここまでマーカーもなく気分良く歩いてきましたが、この山頂にもマーカー一つなくやっとホントの山に来たなぁと感激。ところが帰り際に気付いたのですが、朽ちかけた7,8cm四方ほどのとても小さな板きれが一枚、感動してしまうくらい控えめに枝にくくりつけてありました。もうほとんど字も読めないくらいですが、どうやら「台石山 ダイイシヤマ」と記入されているようです。この北峰は台石山と呼ぶようです。いつの頃かこの山頂で感激に浸ったかも知れない控えめな先人にならって私も台石山と呼ぶことにしましょう。
小広い山頂ですが、北の縁に立つと日光足尾の山々が一望です。男体山、太郎山、日光白根山、半月山、社山、大平山、庚申山、皇海山、袈裟丸山群、眼前大きく横たわる小法師尾根、餅ヶ瀬川の谷の広大な流域、間近な小丸山とロボット雨量計峰、そのすべてが手に取れるほどの近景なのです。ちょっと得難い展望です。日光足尾山群に最も近く対峙しているピークだからこそこ
台石山から皇海山、庚申山、日光白根
の展望です。

こんなところでハイカーに会う:
去りがたい山頂を辞して、つらい登り返しにうんざりしていると頭上で声が聞こえました。なんとこんな所でハイカーに出会うなんて。向こうもびっくりしていましたが、地元みどり市・旧大間々町の山岳会のメンバーの皆さんでした。足尾トンネルから入山して登ってきたということで、さすが山慣れた屈強な皆さん。しばらくお話をして、彼らより先に下山にかかりました。
【便利帳】 トイレ  :折場口。