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鍋倉山 なべくらやま 1288.8m

ブナの森で知られる信越トレイルの一角

飯山市と上越市・妙高市の市界(県界)尾根は標高こそ1000mを少し越える程度ですが初夏まで雪に覆われる豪雪地として知られています。関田山脈と呼ばれるその山塊の最高峰が鍋倉山です。
近年、山麓はブナの森として脚光を浴びて、ブナの森を訪れる人たちのための遊歩道が整備されています。特に巨木の谷の一帯には森太郎、森姫と名付けられた古木があるということでそちらから山頂を目指そうとしましたが前夜の雨で道がほとんど沢と化していてとても歩ける状態ではなく、やむなく関田峠から尾根を往復することにしました。
この尾根ルートは信越トレイルと呼ばれている新潟長野県境縦走路の一部で、その信越トレイルというは斑尾高原からこの鍋倉山などを経由して天水山まで延々80kmにも及ぶ縦走路で、地元では知られた存在らしいです。

関連ページ:鍋倉山(巨木の谷)


         黒倉山頂上

       雪の残るブナの森(ブナ林コース遊歩道)

        産卵するモリアオガエル

      もこもこと盛り上がるような巨木の谷のブナ
【日程】 2011年6月11日
【山域】 信越
【天候】 雨のち晴
【地図】 1/25000猿橋

【アクセス】 上信越道豊田飯山IC出口を右折して3kmほどでまだらお高原を示す標識に従って左折。途中まだらお高原への道や国道292などと交差しますが、かまわず直進します。どうやらこの田舎道は飯山市街を迂回する抜け道のようです。
戸狩で県道上越飯山線(県道95号)にぶつかりますので左折し、そのまま山間道となり関田峠へ。
なお、ナビで鍋倉高原を設定するとペンションなどのある地区に案内されてしまいますので要注意。
【駐車地】
 
峠に数台。満車なら少し戻ると道路脇に停められる場所もあります。
【コース】
関田峠(せきだ)
−筒方峠(どうがた)
− 黒倉山− 鍋倉山(往復)

実行程約3時間 一般向き
【メモ】
黒倉山山頂から光ヶ原方面の展望
 
雨にたたられる:
雨の中自宅を出て、天気予報通り長野県に入ったあたりで雨も上がりこれは期待できると思ったのもつかの間、山間に入るとけっこうな雨脚になってしまいました。
峠道を走って巨木の谷の入山点に着いてみると登山道は道なのか沢なのかわからない状態でとても入って行けそうにありません。
今回の計画では巨木の谷というそれらしいそそられる名前のブナの森を登って鍋倉山頂に達し、尾根道を黒倉山経由で関田峠(せきだとうげ)まで下山するつもりでした。これでは計画を変更せざるを得ません。
しかたなく関田峠まで車を走らせて天候の回復を待ちました。しかし待てども雨の上がる気配はなく、車内でこんなことも予想して持ってきた新聞を読んだり音楽を聴いたりしていましたが、1時間ほどでどうにも待ちきれずやや小降りになったところで雨の中のスタートとなりました。
峠からはわずかに登ってすぐに下り道となります。さっそくブナの林がお出迎えです。ここでは圧倒されるような大木というわけではなく若木と壮年のブナが混じっている程度です。それでも登山道はブナの落ち葉でふかふかと気持ちよく歩けます。
途中2カ所で茶屋池方面の道を分けダラダラと下って行くと筒方峠です。左に小さな池を見ます。モリアオガエルの卵が見えますが帰りに観察するつもりでとりあえず通過。
筒方峠の先ではブナは少なくなって普通の樹林帯という感じになります。オオカメノキ、ムラサキヤシオ、タムシバが賑やかです。雨に濡れた風情もなかなかいいものです。林床を見るとオオイワカガミ、コシノカンアオイがちょうど開花したばかりした。
2カ所ほど雪に覆われてルートがあやふやな箇所もありましたが、迷うほどのこともありません。そのまま尾根をたどるとさして急登もないまま黒倉山に登り着きます。
オオカメノキの咲く静かな頂上です。雨も上がってわずかながら展望も開け新潟側の光ヶ原が広がっているのを見下ろすことができました。
雨が上がると同時にブヨが一斉に飛び出して来ました。とてもじっと立ち止まっていることはできません。この時期、北信や越後の山ではこの虫たちに悩まされます。

森の花(クリックで拡大)

  ユキグニミツバツツジ

  オオカメノキ

  タムシバ

豪雪帯の樹林:
根元から曲がりくねったブナの道
 

黒倉山からやや急な下りとなって、左へ巨木の谷への分岐を分けると鍋倉山への登りとなります。
巨木の谷への分岐から下れないかと偵察しましたが、その先は中途半端に雪に埋まって下ったとしてもこの時期ではちょっと難儀しそうです。雪でルートが判然としない上にすでに藪が出ています。雪がまだしっかり残っているうちか雪が消えてルートがしっかり判断できるようになってからのコースのようです。ちょっと中途半端な時期に来てしまったようです。
このあたりの登路は雪のために曲がりくねったブナの間をすり抜けるように付けられています。今更ながらこの山域の豪雪のすさまじさを感じます。山麓のブナの森とは全く様子の違うブナ帯です。

森の花(クリックで拡大)

  ユキツバキ 

  コシノカンアオイ 

  タニウツギ 
コシノカンアオイの花の謎が解けました。いつも見るコシノカンアオイの花は
濡れた落ち葉に埋もれておまけに褐色にカチカチになってほとんど枯れて
いるようで、これでは花の機能もはたせないだろうにと思っていました。
しかし、あれはどうやら前年の葉と花のなれの果てだったようです。
今回見た花は新しい葉の根元に緑褐色の花を付けていました。
ちなみに花として見ているのは萼裂片だそうです。準絶滅危惧種。 


鍋倉山頂上
 
樹木に覆われた鍋倉山頂上:
鍋倉山頂上の手前ではわずかですがやや急な登りとなります。道は雪に覆われてはいませんが道脇はずっと雪田となっています。もう少し時期が早ければ雪の上を歩いたはずです。
樹林に覆われた通過点のような山頂ですが、一部樹林が切れた場所から妙高方面を覗くことができます。まだまだ雪も多くさすが北信の山々です。
頂上から先へ小沢峠へ向けて信越トレイル縦走路が延びていますが今日はここまで。
鍋倉山頂上より妙高方面の展望
 

筒方峠のモリアオガエル:
卵泡とお疲れモリアオガエル(^_^;
帰路、登りの時に気づいた筒方峠(どうがたとうげ)の黒倉小池に寄ってモリアオガエルをしばらく眺めました。たくさんのモリアオガエルが産卵していました。
卵の泡は孵化した頃に雨が降ると溶けてオタマジャクシが水の中に落下するということですが、この雨でたくさんの卵泡が溶けていました。見ると半溶けの泡が枝にぶら下がってちょっと汚らしい姿ですがこれも生命の営みと思えばなんだか美しい形と思えなくもありません。(^_^;
池はまだ雪田がなかば侵入していて水温はかなり低いはずですが、カエルたちは変温動物にもかかわらずゲコゲコ鳴いたり元気に泳いだりしていました。

ブナ林コース:
ナナカマドの生えたブナ
 

関田峠まで戻り、車でわずかに戻ると左手に遊歩道ブナ林コースの入り口があります。
尾根登山道のブナの森がさほどでもなかったのでこっちも歩いてみることにしました。
遊歩道とはいっても園地のようではなく適度に整備された山道です。
大きなブナの林立する様子は尾根の登山道とは比べものになりません。鍋倉山のブナの森というのはあくまで山麓を指して言うのだなと納得しました。雪田もまだまだ残っていて、雪面にブナの芽の鞘が落ちていかにも春のブナの森です。
奥に行くほどに大木が目立つようになります。洞からナナカマドが元気に茂っている珍しいブナがありました。
もっと奥までブナの森が続いているようですが道は残念ながらUターンしてしまいます。ベンチのある広場やシェルター様の四阿などもあり普段は散策する人たちも多いのでしょうが、午前中の雨でみなさん諦めたらしく結局誰とも会わず静かな森を楽しむことができました。

【便利帳】 トイレ:茶屋池ハウス
【謝謝】 参考ガイドブック 新分県登山ガイド・長野県の山 山と溪谷社
【収穫】(^_^;  12片 60g