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鍋倉山(巨木の谷) なべくらやま 1288.8m

豪雪地帯のブナの森を歩く(森太郎、森姫に会いに)

長野県最北部、新潟県との県境をなす標高ほぼ1000mほどの長大な尾根は関田山脈と呼ばれ、その全山を信越トレイルと名付けられたトレッキングコースが貫いています。ロングトレイルですが多くの峠が超えていますのでいくつかの峠を結ぶコースを脚力にあわせて設定することができるようです。尾根道は厳しいコースではありませんのでハイカーに混じって全山走り抜けるトレイルランの猛者も見かけます。
その県境尾根の一角、たぶん一番人気の山が鍋倉山です。鍋倉山を人気の山に押し上げたのはブナの森、とりわけ樹齢300年とされる森太郎、森姫でしょう。巨木に名前をつけるのは世に知らしめる最も有効かつ手っ取り早い手法に違いありませんが、仮にそんな手を使わずともこの一帯のブナの森のすばらしさはなんら変わりません。
今年6月にブナの新緑と残雪を楽しもうと出かけましたが、あいにく前夜から続く豪雨のためお目当ての巨木の森への登山道は沢と化して全く入ることができず、仕方なく関田峠から雨衣を着て尾根道のコースから頂上まで歩いてきました。
巨木の谷で森太郎、森姫になんとか会いたいものだとその後も再訪を念願していましたが、仲間を得て紅葉終盤の時期に出かけることができました。

関連ページ:鍋倉山


       頂上の石祠
         いきなりブナの巨木がお出迎え
【日程】 2011年11月3日
【山域】 北信
【天候】 曇り時々晴
【地図】 1/25000野沢温泉

【アクセス】 上信越自動車道豊田飯山IC出口を右折(国道117号バイパス)、3kmほどで斑尾高原を示す案内に従って左折すれば飯山や戸狩の市街を通らずに済みます。
戸狩温泉の先で県道上越飯山線に突き当たったら左折して道なりに関田峠を目指します。
温井集落を過ぎると山の中となります。左に田茂木池を見ると前方に鍋倉山を仰ぐようになり程なく森太郎のある巨木の森入り口です。
標識は登山道をわずかに入った場所にあるので車道からはわかりませんが、すぐ先に駐車場があります。
【駐車地】
標識がないのでわかりにくいですが左手に鍋倉山を見上げる地点で左は鍋倉山の斜面、右は高原状の地形の地点です。
10台以上。
【コース】
駐車場 - 巨木の谷(森姫、森太郎) - 稜線
- 鍋倉山 - 黒倉山 - 筒方峠 - 茶屋池
- 駐車場

全行程 5時間 一般向き
【メモ】
森太郎
 
わかりにくい入山口:
駐車場から50mほど戻った地点に入山口がありますがなんの案内板もないのでわかりにくく少し戸惑います。しかし山道に入ってすぐに案内板があってすぐにここが登山口だとわかります。おそらく車道からは見えない場所にわざわざ立てたのではないかと思われます。老いた巨木を守りつつハイカーにも見てもらいたいという思いが伝わるような標識です。
最初こそ藪っぽい登山道ですがすぐにブナの森になります。若木と巨木が交じった勢いのある森です。すでにブナの葉はだいたい落葉して登山道をふかふかに埋めています。モミジなどはまだまだ色づいています。
登山道は左に折れてトラバース気味の道となり小尾根に達すると直接鍋倉山に向かう登山道と森姫、森太郎に向かう登山道に分かれます。

残念な森姫、森太郎:
小尾根を超えてやや湿った谷に降りると森姫の分岐があり左に下るとすぐに森姫。しかし残念ながらすでに枯死して朽ちかかった無残な姿をさらしています。付近は湿った谷なので朽ちるのも早いかと思われます。この付近はすっきりときれいなブナの森の斜面とは違ってじめじめした地形の藪の谷という印象です。
ちょっとがっかりしながら分岐まで戻りさらに鍋倉山の山懐に入っていきます。巨木が目立つブナの森です。小沢をいくつか越えた深い森の中に森太郎は立っていました。しかしこちらも樹齢300年以上ですから風格があるというよりは残念ながら樹勢の弱った老木でした。私たちは巨木に感情を沿わせてしまいますが、実際にはこうして森が更新していくということでしょう。ちょっと残念な森姫と森太郎でした。
また小尾根まで小沢をいくつか越えながら戻るようにトラバースして先ほど分かれた鍋倉山への道に合流します。このあたりは壮年期のブナが多く、標高が上がるに従って葉をすっかり落とした冬姿になりまさしく別名のシロブナの通り山全体が白く感じるほどです。この合流地点付近が登りのルートでは一番のブナの森と感じました。

         葉を落としたシロブナの斜面

           ねじ曲がった稜線のブナ

木島平、志賀方面信濃川
 
鍋倉山:
稜線に達すると尾根道に合流します。ちょうど黒倉山と鍋倉山の中間です。
左に鍋倉山を目指します。
尾根はブナに覆われていますが豪雪と強風の影響かあのすっくと立った斜面のブナの木とは違ってねじ曲がってその姿はとてもブナとは思えません。中には途中で1回転しているのや曲がって絡み合ったのなどもあり、この稜線の気候の激しさを物語っています。
だらだらと登って行くと程なく鍋倉山頂上。小さな石祠と山名標がある小広い頂上です。
右手がわずかに刈り込まれていて妙高方面が望めます。
細長い頂上をさらにそのまま進むと木島平方面の信濃川や野沢温泉スキー場など展望が開けます。その先には志賀高原方面の山々が横たわっています。
尾根道は先に続きますが私たちはここまでとしました。
まだ時刻も早いので昼食は後にして下山にかかりました。
すばらしい茶屋池のブナ:
下山は先ほどの巨木の谷からの合流点を過ぎ黒倉山まではあっという間です。ほとんど双耳峰といっていいくらいです。
黒倉山からは北東へ展望が広がっています。眼下に広がる高原は光ヶ原、そして日本海も意外な近さです。
茶屋池
 
黒倉山で稜線は右に折れなだらかに下ります。よく踏まれた道ですたすたと足がはかどります。時々光ヶ原方面が開けると眼下に裸になった白いブナの森を見ることができます。緑あふれるブナの森も美しいですが晩秋の白い森の景観もまたブナの森の一面です。
徐々に標高が下がってくるとブナの大木が多くなり、筒方峠で初夏にモリアオガエルのたくさんいた沼を見るとわずかで茶屋池方向分岐です。尾根からわずかに下るとブナの巨木の間から明るい湖面が見えます。落ち葉がふかふかと気持ちの良い道です。
池の手前にベンチのある広場があり湖面を見ながら休憩によい場所となっています。ここでコーヒーを淹れてしばし森の雰囲気を楽しみました。それにしてもなんとも美しい池です。周囲をブナに包まれて静かに水をたたえていました。(帰りに池を回り込んで初めてこの池が人工の池であることがわかりました。灌漑用でしょうか。美しい池の姿から当然自然の池とばかり思い込んでいました。)
帰りの道もまた楽し:
紅葉の斜面
 

茶屋池を回り込んだ反対側には自動車道に面して茶屋ハウスがあります。シーズンオフのためか閉まっていましたのでネイチャーセンターみたいなものなのかあるいは単に売店なのかわかりません。
茶屋ハウス前には観光会社のハイキングツァーのバスが客が下山してくるのを待っていました。最高点の峠で客を降ろして下山地で待っているとのことでした。山の登り方は人それぞれとはいうもののずいぶん横着な登り方だなぁと思います。一方、私たちはこれから入山点の駐車地まで戻らなければなりません。ここからは車道歩きです。
茶屋ハウスから少し下ると明るい南斜面で遅めの紅葉を楽しみながらほんとうはのんびりと行きたいところですが、ここはせっせと足を運ばなければ車まではけっこうな距離があります。途中展望台があって木島平や信濃川が眼下に広がっているのを眺めることができます。またその先には苗場山、鳥甲山なども展望できます。
駐車地からは車で。車道を下ると田茂木池周囲は紅葉真っ盛り、特に池を前にして眺める鍋倉山尾根突端斜面の紅葉は見事でした。田茂木池は西側に湿原を隣接したきれいな池ですがこれも灌漑用と思われる人工池でした。
          

       田茂木池の紅葉 
 
       ナナカマド
【便利帳】 トイレ:茶屋ハウス
【寄り道】  中野豊田IC近くに道の駅ふるさと豊田。お蕎麦がおいしいです。 
【収穫】 32片 60g (^_^;