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天水山 三方岳 あまみずやま1088m さんぽうだけ1138m

信越トレイルの東端に素敵なブナの森

2012-5-16(こちら)
残雪とブナの新緑との取り合わせほど心を打つ風景はありません。
永いこと恋い焦がれていた信越トレイルの終点・天水山を歩いてきました。(じつは昨年秋にも登ろうとしたのですが雪に阻まれて登山口にさえたどり着けませんでした。)
とにかくブナです。ブナの山です。至るところブナの大木で、それらが残雪の中ですっくと立つ姿は感動的です。
名にし負う豪雪帯ですから雪の量が半端ではありません。ですからわずか1000mの標高ながら5月末になっても斜面はべっとりと雪の原で林道は雪に埋もれ稜線もほぼ雪の上を歩く有様です。
帰路は林道を歩くはずがとんでもない雪の急斜面のトラバースとなって少し苦労しましたが、私たちだけの小さな山脈縦走は記憶にいつまでも残りそうな素敵な一日となりました。

2014-6-1(こちら)
少し雪解けが進んだ季節にまた歩いてきました。

関連ページ:
天水越ブナの森

野々海池

     三方岳頂上       根開けの進むブナの森
      新潟側の断崖状斜面       遠く米山を望む
【日程】 2012年5月26日(こちら)
2014年6月1日(こちら)
【山域】 信越
【天候】
【地図】 1/25000松之山温泉、柳島

【アクセス】 2012-5-26
関越道塩沢石打ICを出て石打から国道353号で十日町市山崎へ。
山崎から津南に出て、津南から国道405号を予定するも雪で通行止めとわかり国道353号、県道358号とつないで天水越で国道405号へ。天水越の先で国道405号はまた雪の通行止めとなるので通行止め地点で左の山道へ入って大厳寺高原まで。
(一応その先は通行止めになっていますが除雪してあるのでみなさん林道を登山口までへ入っています。登山口でその先は雪に阻まれます。)
なおこの一帯は前年の地震のために路肩に亀裂が入ったり路面に段差が生じたりしていますので運転には細心の注意が必要です。

2014-6-1
石打から十日町山崎通じる国道353が崖崩れで通行止めということで国道17を砂押まで北上し県道76経由で大回りさせられました。
【駐車地】

2012-5-26
登山口前に駐車場があるはずですが雪の下。路肩に数台駐車可。

2014-6-1
雪が消えて駐車場が使えるようになっていました。10台くらいは駐車できます。
トイレはまだ開放されていませんでした。
【コース】
登山口 - 稜線 - 天水山 - 三方岳
- 深坂峠 - 林道 - 登山口

全行程 2012-5-26 6時間
      2014-6-1 5.5時間(雪が少なかっ      たため多少ペースが上がりました。

ベテラン向き(無雪期は一般向きのようです。)
【メモ】
2012-5-26
いきなり深いブナの森:
いきなり素晴らしいブナの森
 

天水越(あまみずこえ)は旧松之山の最奥の集落で、いわば豪雪地帯の中の豪雪地帯です。家々はいかにも豪雪地帯らしい構えで雪への備えが施されています。
集落を抜けて高原状の棚田地帯になると国道405号はこれが国道?と思うような山道となり、ついには積雪期の通行止めとなってしまいました。5月も末というのに国道が通行止めとは。
でも幸いなことに私たちの目指す天水山への道はちょうどここから左に分かれて大厳寺高原(だいごんじこうげん)へ通行可能です。
昨秋雪に阻まれた地点も今は棚田の田植えの準備に農家の人たちがあちこちに見られのどかな風景の中です。
右手に大厳寺高原希望館を見ると大きな池の前で道が二分します。右が希望館、左が天水山登山口方面です。一応天水山方向へは通行止めの簡易バーが置いてありますが脇から通り抜けられるためみなさん入り込んでいるようです。私たちも簡易バーを見ないことにして林道をさらに奥へ。(^_^;
林道がブナの森の中へと入って新緑と残雪がまぶしい気分の良い道となると、程なく二分してそのどちらも雪に阻まれます。このあたりに駐車場があるはずですがもちろん雪の下で場所さえわかりません。すでに路肩に3,4台駐車していました。先客はすべてブナの森を撮影しようとやってきたカメラ愛好者のみなさんで登山に入ったのは私たちだけのようです。みなさんはちょこっと森に入っただけでブナの撮影をして帰ってしまうようです。
雪に覆われて登山口がどこかよくわかりませんがそれらしい沢すじをルートにとっていよいよ残雪とブナの天水山へ。
いきなり深い森です。この風景が見たくて遠く信越トレイルの一角までやってきたのですから、もちろん大感激です。昨年春(鍋倉山)は時期を外してほぼ雪解けしてしまい、昨秋(天水山)は雪に阻まれ登山口さえたどり着けず、やっと今この景観に会えました。
一面の残雪の斜面でブナの根元から雪解け(根開け)が始まり見上げるともうブナは新しい緑を枝いっぱいに広げて風に揺れています。
     薄日の射し込むブナの森

稜線も春の花と残雪の道:
雪の登路は夏道もわからないので適当に高みを目指して登って行くと平坦な鞍部に登り尽きました。どうやら途中はともかく入山点と稜線への到達点とは夏道の破線に合致したようです。ここで前方にカモシカがお出迎えしてくれました。
この鞍部から天水山までは比較的雪解けが早かったらしくたくさんのイワウチワが咲いていました。ちょうど満開でさながらイワウチワの尾根と呼べるくらいたくさん咲いています。他にオオカメノキ、ユキグニミツバツツジ、ショウジョウバカマ、イワカガミ、タムシバなどが花を見せてくれました。
天水山頂上 
やや急登で天水山頂上です。どうやら地形の関係かここだけ春の足取りが速いようです。笹と下草が茂って全コース中で唯一ぱっとしない場所で、永いこと恋い焦がれていたのにちょっと拍子抜けでした。
それでも周囲にはブナの大木があちこちに見られさすが信越トレイルの終点ピークだけのことはあります。

核心は天水山~三方岳の雪とブナ:
天水山からの稜線は豊富な残雪とブナの巨木の連続です。
入山時には薄曇りでしたが天水山を越えた頃から青空が広がって雪原の白さが目に痛いほどです。ブナの森も陽を浴びてさらに輝きを増しました。
行けども行けどもブナの森ですが微妙に地形も変わっていますから森の景観もそれぞれ変化があって見飽きることはありません。ブナの輝きもまた森の微妙な変化とともに色を変えていきます。
三方岳はまるっきり雪に覆われていました。山名標識が雪原から頭だけ覗かせていました。
三方岳から深坂峠まで緩い降りとなります。この山脈は特異な地形で長野側が緩斜面、新潟側が断崖になっていて、それが特に顕著なこのあたりでは長野側に大きく雪田が広がり新潟側は足下から切れ落ちて遙か下方まで一望です。
突然舗装道路に飛び出すとそこは信州と越後をつなぐ深坂峠(みさかとうげ)です。
     天水山を振り返る
     稜線の残雪原
 

信越トレイルの花(写真クリックで拡大

 イワウチワ

  オオカメノキ

  ミズバショウ

難儀だった周回戻りルート:
深坂峠の先に続く深い残雪の尾根
 
峠道は長野県側が除雪されているもののそれは峠までで、新潟県側は深い雪の下です。案内標識も峠の名を彫った石碑も半ば埋もれていました。
帰路は新潟県側の林道を戻ろうと決めていたので楽ちんなのんびりコースのはずでした。ところがこの林道は断崖状の斜面の途中に無理矢理造ったような経路なので急な雪の斜面に隠されてしまっています。半分ほどはこの下に道があるだろうとどうにか想像できる程度、あとの半分は全くその存在さえわからないほどです。
大丈夫だろうかと少々不安ですがとにかく軽アイゼンをつけて雪の斜面をトラバースして行くことにしました。初めのうちこそ比較的緩い傾斜でしたが次第に急傾斜となり、もしスリップでもしようものなら一気に数十メートルも滑落しそうです。危険な場所は大下りしたり登り返したりして回避しましたが、そのためかなり余計なエネルギーを浪費しました。
おまけに午後の日差しが照りつけるので頭上の雪塊が気が気ではありません。雪棚が緩んで亀裂も見えます。
案の定、私たちが通り過ぎたばかりの斜面に大きな雪塊がいくつも転がり落ちていきました。
しかし、気の抜けないトラバースでしたが急斜面だけあって展望は抜群でした。足下に広がる雪原とブナの疎林、その先に奥深く拓かれた棚田、そしてうねうねと低山を重ねる頸城の山々、さらにその先には刈羽黒姫山と米山が聳えています。これが厳しく優しい信越の景色です。
  足下に広がるブナの雪原と棚田群
   林道を隠した斜面をトラバース
最後まで雪を踏みながらブナの森をたどるとひょっこり登山口に飛び出しました。
入山の時には3、4台ほどだったのに、全国あちこちのナンバーをつけた数台の車に加え、なんと中型のバスまで駐車していました。ブナの森の撮影ツァーだそうです。この場所は撮影ポイントとして有名だそうですが、しかし、ツァーのみなさんはちょこっと森の入り口だけ撮影してこのブナの森の核心は知らずに下山してしまうようです。

2014-6-1
かなり雪は少なめ:
この冬の雪はどこも半端ではなかったので雪解けも遅いだろうと踏んで少し時期を遅くしましたが、ここのところの暑さのためかかなり雪も
苗場山(見慣れた形とは逆)
消えていました。登山口までなんの障害もなく一気に登ることができました。駐車場にもまったく雪はなく、3度目にして初めてこんな駐車場だったかと分かった次第です。(^_^;
既に車が2台停まっていましたが、途中で会ったこの車の主は三方岳までは行かずに戻ったのでその先では私たちだけの山となったわけです。
昨年までは雪にすっかり覆われた斜面を登っていたのですが今年はその登路に林道や堰堤があることが分かりました。人跡稀な山深い奥山と思っていたのが意外に普通の山だったわけです。
もう根開けの時期は終わって残雪もまだら模様です。雪のない斜面にはしっかりした登山道も姿を現していました。
稜線に出て天水山まではあまり雪もなく夏道をたどります。野鳥のさえずりが心地よく道脇にはイワカガミやイワウチワも咲いてそれらを楽しみながら足もはかどります。
天水山から三方岳までの稜線歩きはブナの巨木が続き雪も多く残ってこの山脈の核心部です。天水山先の鞍部はブナの巨木林が圧巻です。
三方岳に向けて徐々に標高も高くなり、また雪に樹木が埋まって展望が良くなって、振り返ると苗場山周辺、越後三山、下田山塊などが一望です。
三方岳雪田 たかだか1100mで6月になったというのにこの雪
眼下に広がる棚田と杉木立 右奥は刈羽黒姫山
三方岳手前の雪田は冬にはどれだけ降るのか想像つかないほどの雪の量でしばらくは消えそうにありません。
三方岳頂上部も大きな雪田に覆われていますが頂上の三角点の場所だけは雪も解けて剥き出しになっていました。周囲はけっこう藪なので夏になってすっかり雪が解けると展望もなくなってしまいそうです。
三方岳からは深坂峠へ向けて高度を下げながら稜線をたどります。この山脈全体、とりわけ三方岳の先は信州側は緩斜面、越後側は断崖と非対称の地形で信州側は深いブナの森、越後側は眼下に最奥の棚田などが見下ろせます。見下ろすブナの疎林の先に棚田と越後独特の杉木立、そして遙か離れて米山や刈羽黒姫山まで見通せます。
深坂峠:
深坂峠は唐突に現れます。長野側と新潟側を繋ぐ舗装道路が通じていますが走れるのは長野側だけで新潟側は雪に覆われています。
雪田の中に現れたミズバショウ池(撮影あまな氏)
もっとも現地の看板によれば雪が解けても落石危険のため長野側は通行できないようです。
峠周辺はなだらかな地形で道路以外はすっかり雪に覆われています。下調べしたところここまでの林道は通行できないということでしたが実際には除雪も終わり車が上ってきていました。
少し長野側へ歩くと雪原の一角に雪の解けた池が現れてい小振りのミズバショウがたくさん咲いていました。近頃どこでも富栄養の大きなミズバショウが目立ちますがここではかわいい花姿でびっしり咲いています。
峠に戻り新潟側の展望を満喫しながら遅めの昼食にしました。
帰路は林道をたどって登山口へ:
一昨年にも林道を戻りましたが大量の雪でほとんど道が埋まって急斜面のトラバースが続き、通過して振り返ったら雪の崩落が起こったりして怖い思いをしました。
深山峠付近から雪に埋もれた林道と天水山方面
どうやら今年は時期も遅く雪解けも進んでいますので危険箇所はあまり多くはないようです。
路肩が現れている部分がほとんどで左の急斜面に気をつければだいたいは通過できました。しかし道いっぱいに雪が覆い尽くしている部分もあってそんなところでは急斜面のトラバースをせざるを得ません。雪が覆っていたりアスファルトが露出したりで軽アイゼンを履いたり脱いだり忙しいこと。
林道の前半は断崖の中間を無理矢理林道開削したという感じですから眺めのいいこと、雪の上を歩くときは別にしてあとは広大な頸城丘陵を眺めながらさながら空中散歩です。
一時間半ほどの快適な林道歩き+緊張の雪面トラバースで登山口に戻ったときにはすでに他の車は帰ったあとでした。

天水山の花(写真クリックで拡大)

 ユキグニミツバツツジ

 イワウチワ(白花)

 サンカヨウ

 ユキツバキ

 ミズバショウ
【便利帳】  トイレ:大厳寺高原希望館
コンビニ:松之山地区に入るとありません。大厳寺高原に飲料自販機。 
【収穫】(^_^; 2012-5-26 3片 10g ゴミは雪の下に隠れてしまったかも。(^_^;

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