栃木・群馬・茨城・埼玉の県境が集まる関東平野のど真ん中にほぼ山手線内の2/3が収まるほどの広大なヨシ原が存在することは
あまり知られてはいません。しかし一度でもこの緑の広がりを目にしたならきっと強烈な印象とともに、いつまでもこのままであって欲しいと
願わずにはいられないはずです。
この広大なヨシ原、渡良瀬遊水池は、かつて足尾銅山の鉱毒被害に立ち向かった渡良瀬川下流域の村々の中でも最後まで抵抗した
谷中村の跡地です。今も残る墓地や住居跡を生い茂ったヨシが静かに包んでいます。
ここは足尾鉱毒事件と谷中村の歴史を秘めた地、湿地・草原に生きる貴重な動植物の宝庫、そしてまた自然を破壊から守り環境を考える
拠点、というようにいろいろな顔を見せています。関東平野にゆったりと広がるこの遊水池を、1人でも多くのみなさんに見ていただきたいと
願って、ほんの断片ながら紹介します。

2005-9-29 新赤麻橋より広大な第2調整池予定地(遠く筑波山、加波山を望む)


今、この湿地を守るために真剣に取り組まなければならない問題もあるのですが、ここでは一応置いておくとして、
自然大好きの目で見つけた素敵な場所を案内いたしますね。
ということで 
遊ぶなら、ここ!

 鷹見台から見た第2調整池予定地(遠景は大平山)
毎年5月に仲間たちと「お昼寝」をしています。関東一円から集まって、ヨシの芽吹きを眺めながら、ただ、お昼寝。
植物観察したり、バードウォッチングしたり、草笛作ったり、走り回ったり、ビール飲んだり....。
あまり人も来ないで一日誰にも邪魔されることもなく過ごしたい。そんな私たちにお誂え向きな場所が渡良瀬川にかかる「新赤麻橋」を渡った南側堤防。
新赤麻橋たもとは通称鷹見台といってここまでクルマで来るバードウォッチャーは多いですが、わずか500mほど南に歩いて堤防中段に降りると目の前は広大なヨシの原で誰も来る人はありません。ここは多くの人たちの運動が実り事業が中断している第2調整池予定地を一望にできます。まさに大湿地と呼ぶにふさわしい広大さです。寝ころぶとスイバやハルジオン、ムラサキツメクサなどの花に埋もれてヨシキリ、ヒバリ、カッコウ、コジュケイなどがうるさいくらいです。単眼鏡を覗くと中央部にある木立にはワシタカ類も見られます。
一日何することもなく過ごすには素晴らしい秘密の場所です。
道順:
北エントランスから東にまっすぐ舗装道路を進み渡良瀬川に突き当たったら左折して堤防に登り新赤麻橋を渡ります。渡った先が駐車可能な広場になっています。
堤防上を南(北でもいい)にしばらく歩いて左側中段に降り、適当に草を分けて、昼寝。

参考:

時期が遅いと例年草刈りがされますので野の花はなくなってしまいます。草刈り時期は例年5月中頃のようです。
雨に遭ったら新赤麻橋下がよい雨宿り場所。
 
昔を偲ぶにはここ!
谷中村跡に一度は行っておきたい!
旧谷中村役場前はリクリエーション基地の観がありますが、駐車場とトイレがあるので遊水池に遊ぶ基地になっています。一応ありがたいポイントではあります。
駐車場隣が役場跡など旧谷中村中心地です。盛り土を見ると当時の低湿地の村の苦闘が偲ばれます。ここだけで帰らず是非とも墓地なども巡ってみたいものです。遊歩道も夏には草が茂ってしまいますので長袖姿がいいかもしれません。多少とも予備知識をもって訪れると感慨深いものがあります。

         役場跡

   雷電神社跡

    延命寺共同墓地

   彼岸花の咲き乱れる共同墓地

昔はこんな景観だったかな?
草を分け入ることなく昔のこのあたりの川筋の景観を見られるのが新川にかかる谷中橋です。今は周辺の町村も河川整備が進み低湿地独特の景観も少なくなりましたが、かつて遊水池に流れ込んでいる板倉川や谷田川筋にはこんなところがたくさんありました。
ヨシや水草が生い茂りどこが川岸か判然としないような淵でフナなどの川魚がたくさん釣れた、そんな昔の川の姿そのままに今もゆったりと流れています。

道順:

谷中村跡は北エントランスから入って中程で舗装道路を右折。大駐車場とトイレ、売店があります。サイクリング基地でもあります。
谷中橋は右折せずに新赤麻橋に向かって走り渡良瀬川手前の橋。

         昔の低湿地が偲ばれる新川

  ゆったりと流れる渡良瀬川(遠景は三毳山)

 
遊水池を守る運動

遊水池の自然に触れて、これはこのままの姿で未来への贈り物にしなければと感じたみなさん、もっと遊水池のことを知りたいと思ったみなさん、何か行動をと思った皆さんに渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会を紹介いたします。

エントランス周辺を見れば分かるとおり遊水池にはすでに一部開発事業の名で破壊が進んでいます。多くの人たちの運動により中断されたかに思えた第2貯水池建設事業も、手を替え品を替えの執拗な事業推進を前にかなり緊急な事態になってきています。湿地再生とか水質改善とか聞こえのいい言葉の裏に、「事業」そのものが目的と化した相変わらずの建設行政が見え隠れします。
渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会は1990年以来、一貫して遊水池の自然を守る運動の先頭に立って地道な活動をしてきました。また機関誌発行に加え遊水池の自然を紹介するリーフレット、パンフレットなども刊行し私たち自然愛好者にも多大な便宜を図ってきました。

ちなみに、山とんぼも幽霊会員です。全然なぁんにも行動してませんが(すんません(^_^; )、それがきっかけで遊水池の自然を大切に思う気持ちはずいぶん膨らんできました。

書籍紹介
「新・渡良瀬遊水池−自然と歴史の野外博物館に」 渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会(編)
  随想社 \1000+税


そっと小さな声ですが
 これ以上遊水池を破壊するな!
 第2貯水池事業を監視しよう!
 遊水池の貴重な動植物を守ろう!