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四ッ又山 よつまたやま 899.5m

ミツバツツジとアカヤシオの競演

西上州の玄関口に位置する四ッ又山。その位置関係から怪峰・鹿岳(かなだけ)の前衛峰のように見られていますが、実際には標高こそ鹿岳には届かないものの歴とした独立峰です。
新緑のまぶしい4月末、ツツジの花を楽しみに登ってきました。


         四ッ又山頂上
            第2峰からアカヤシオ咲く主峰を見る
【日程】 2011年4月29日
【山域】 西上州
【天候】 晴れ
【地図】 1/25000荒船山

【アクセス】 下仁田から南牧村に入ってほどなく南牧川に架かる赤い小沢橋を右折して渡り(黒滝山案内板あり)、橋の先の突き当たりを右折してすぐ美容院先で登山口を示す案内板に従って左折して舗装道を登ると野々上(ののうえ)の集落。
【駐車地】
 
  野々上 ゴミ収集所脇駐車可能地

   大久保 下山地 駐車可能資材置き場 
野々上の集落内に駐車場はなく、やむを得ず路肩に駐車することになりますが、生活道路なので近所の方の了解を得るのがよいかもしれません。私たちもゴミ収集所脇の路肩に停めましたが、前の家の方に聞いて「このあたりなら邪魔にならないよ」と教えていただきました。
路肩に停めたくないなら、どうせ周回することを考えて大久保の下山地に駐車するのが得策です。下山地に資材置き場があり登山者に駐車地として開放しています。ただし資材置き場ですので迷惑にならないようにすることとトラブルに際しては自己責任で。
【コース】
野々上
−茶畑跡− 落葉樹林帯平坦尾根
− 大天狗 − 四ッ又山 −マメガタ峠
−大久保 − 野々上

実行程約5時間 一般向き
【メモ】
美しさ際立つ落葉樹林
 
美しい落葉樹林:
野々上の集落は全体が急斜面で、巧妙に造られた石垣で山畑や人家が維持されている典型的な西上州の集落です。集落内の道路も急坂で舗装道を登るだけでももう山登りという感じです。
集落が尽きて山道になるとさらに急登となりますが、その分効率よく高度を上げることができます。
一旦傾斜が緩むと山畑の跡に出ます。茶畑だったようで名残の茶の木がたくさん残っています。
平坦地形になり小尾根を越えて道がトラバース気味になったところで尾根を進み道を失いましたが、このあたりからは美しい落葉樹林になってどこを歩いてもいいようなさっぱりした林床です。とりあえず尾根の位置を右に気にしつつ芽吹きの林を楽しみながら適当に進みました。
じつは登山道はこの平坦な尾根を巻いてトラバースしているようで、この先の大天狗の峠でまた合流しました。
770m峰の高みに登り着き大天狗の峠まではミツバツツジを楽しみながらの緩い下りとなります。この下りの尾根はしっかりとした道形が付いていました。
この平坦尾根の短い縦走はたまたま適当に歩いてしまったために通ることになったのですが、なだらかな地形といい、新緑の落葉樹林といい、あでやかなミツバツツジといい、とても素晴らしい道でした。本来の登山道とは違いますが芽吹きの頃にぜひとも歩いてほしいルートです。
下りきった大天狗の峠は野々上からの道、大久保からの道、下郷からの道を合わせて四ッ又山へと通じる交差点の峠に当たります。ただし、標識はあるものの下郷への道は鍾乳洞などもあるそうで興味はそそられますが道が荒れているためか通行禁止になっています。
峠には大天狗と掘られた石塔と天狗の姿を掘った石像がありますがともに大天狗と言うにはかわいすぎるほど小さくて杉の根方にちょこんと置いてあるという風情です。

ミツバツツジ、アカヤシオの競演:
ミツバツツジ
 
大天狗の峠から急登で一気に高度を上げます。ミツバツツジの咲き乱れる明るい斜面でそれらの花を楽しんでいるうちに岩がちの頂稜部に登り着きます。
主峰はルートから右に分岐した先にあります。この時期ですから、アカヤシオに包まれたあでやかな頂上でした。
南方向が少しだけ樹木に遮られますがほぼ全方位の展望です。あいにく黄砂の影響か遠望とまではいきませんでしたが、近景の鹿岳、妙義山、浅間山などに圧倒されました。また上州の平野も一望で下仁田から富岡方面へと続く丘陵地の緑が新鮮でした。
頂上はあまり広くはありませんが少人数でお弁当を開くには充分です。花に包まれて山々を眺めながら飲むくコーヒーのおいしいこと。
怪峰・鹿岳はすぐ目と鼻の先で、こちらのアカヤシオがすでに満開を過ぎているのに対しちょうど見頃の色つきで断崖を染めていました。遅かった今年の春の足取りがここへ来て急ぎ始めたようです。


      鹿岳と浅間山 
 
      2峰の先に妙義山

お行儀よく並ぶ4つの頂上:
ルート分岐まで戻り次のピークを目指します。岩場のトラバース道ですがロープも固定されていて危険を感じるようなことはありません。
2峰岩壁のミツバツツジ
 
コルから見上げると主峰はアカヤシオ、次のピーク2峰はミツバツツジに包まれています。とりわけ2峰の岩場のミツバツツジは密度が濃くそれらがちょうど満開で薄暗いコルのはずなのにぱっとあでやかに輝いていました。
2峰はユーモラスな烏天狗の像の先のピークです。ここも抜群の展望です。
振り返ると主峰のアカヤシオが見事です。むしろ頂上にいるときはそれほどとも思えなかったのに隣から眺めた姿の方が花が見事に見えるのはなにやら世間の人生訓を想起させます。
3峰、4峰と小ピークをたどりますが主峰、2峰も含めすべてのピークには石像か石祠があって古くから信仰の山であったことがうかがえます。いずれも好展望の岩峰です。
ユーモラスな烏天狗
 

マメガタ峠をへて大久保へ下山: 
明るく開放的なマメガタ峠(日陰は鹿岳側の人工林)
 
4峰から方向を西へ変え一気に下ります。向かいにはアカヤシオを纏った鹿岳が聳えていて登降欲をそそります。健脚のハイカーはマメガタ峠を経て鹿岳まで足を延ばすようですが私たちはマメガタ峠から左に折れて大久保へ下山しました。
マメガタ峠は鹿岳側がヒノキ林ですが四ッ又山側は明るい雑木林で、落ち葉の斜面に座って春の日を浴びながら一休みするのに絶好のポイントです。
峠からは道も広く歩きやすくなり、足もはかどります。途中四ッ又山の大天狗からの道を合わせるとほどなく大久保登山口です。登山口にある資材置き場は所有者が登山者用駐車場として開放していますので、駐車場所に苦労する野々上側よりこちらに停めた方がいいかもしれません。
あとは舗装道を野々上まで車回収に戻るだけです。

山名表記について:
ガイドブックなどでは「四ッ又山」としている例がほとんどですがこれはたぶん1/25000地形図の山名表記が根拠となっていると思われます。しかし、(おそらく地元で建てた)山頂の山名板では「四ッ叉山」となっています。「又」は「叉」の略字ではなくその成り立ちも意味も違います。どうも漢字の意味からだけ考えると「叉」の方がすっきりします。(理由は漢和辞書でも見てください。)
もっとも地名ですから漢字の意味だけから断定することはできませんが、「四ッ叉山」には地元のこだわりが見えて私もこちらに与したい気がします。地元の識者の意見を伺いたいものです。(と言いつつ、このページでは「四ッ又山」としました。漢字変換したらそうなったからというだけですけど。)
ちなみに頂上山名板、1/25000地形図の山名表記、ガイドブック、多くのサイトでほとんどの表記が「ッ」(促音)のようです。読み方はもちろん促音じゃないですが。まあ、いずれにしろ山の楽しさは変わりません。(^_^)
【便利帳】 トイレ:山中にはありません。あらかじめ道の駅しもにた、コンビニなどを利用することになります。
【収穫】(^_^;  34片 230g