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武生山 たきゅうさん 458.7m

亀ヶ淵の不思議な景観

竜神峡、武生山一帯は全体じつに不思議な地形です。竜神峡は深く谷を刻んでその上流域は人を寄せ付けないかのようで稜線に突き上げる岩稜は険しい山容を示しています。なのにひとたび頂稜部に登り着くとそこは穏やかな台地で畑地や人家が点在する里山の景観を見せています。奥久慈全体がこんな印象ですがとりわけ武生山周辺はその感を強く受けます。
武生山そのものは登山対象とは言い難いのですが竜神峡から周回すれば印象深いハイキングとなります。初冬の一日、のんびり歩いてきました。


            武生山頂上
     亀ヶ淵 滝壺は巨大な甌穴
【日程】 2014年12月20日
【山域】 奥久慈
【天候】 曇り
【地図】 1/25000大中宿

【アクセス】 日立南太田ICから国道6号を北へわずか走って大和田で左折し国道293で常陸太田市街へ。
常陸太田市街は判りにくいですが要所に竜神大吊橋を示す案内がありますからそれを頼りに県道33号へ。県道33号を北上してまず竜神大吊橋分岐を過ぎ、さらに竜神ダム分岐を過ぎ、次に竜神ふるさと村案内に従って左折。(狭い道)
道は武生林道となりますが途中の竜神ふるさと村の入口で左に折れてほどなく竜神ふるさと村。
【駐車地】 大駐車場。
数十台。
【コース】
竜神ふるさと村
- 竜神峡 - 亀ヶ淵
- 武生林道- 武生山 - 武生神社
- 宝剣洞展望台 - 竜神ふるさと村


実行程 約3.5時間 一般
向き
【メモ】
竜神川支流の岩風呂みたいな滝
急な下りから始まり沢沿いを亀ヶ淵まで:
県道からふるさと村の案内に従って狭い林道を登ります。ぐんぐん高度を上げてそろそろ稜線かなと思ったところでいきなり右に折れて立派な道路に変わります。たぶん登ってきたルートとは異なる別の道が計画されているのではないでしょうか。
その立派な道は武生林道で、地形図を見る限りでは途中からまた旧い道になっているようですが林道はこの先ずっと北へ持方の方向へ延びています。
舗装道をわずかに北へ走るとふるさと村を示す案内があり、それに従って左に折れるとわずかでふるさと村の大きな駐車場です。
ふるさと村は冬季閉鎖中で駐車場に他の車はありませんでした。身支度をしてそのままふるさと村へ進むと急な階段に導かれていきなり大下りになります。せっかく車で上がってきたのにまるきり帳消しです。
しばらく急な階段を下ると舗装道に降り着きます。この辺が竜神ダムで堰き止められた竜神湖の上流の末端にあたります。舗装路はサイクリング用のようで通常は車が通ることはありません。
対岸にも歩道がありますが見たところ崩壊した箇所が多くとても歩けそうにはありません。
竜神川の流れはさらに2,30m下方になりますので沢筋を歩くというよりただ中腹の舗装道を歩く感じです。両側の斜面は急峻でとりわけ右岸側の明山(たぶん明山の山頂ではなく派生した尾根の末端)が険しい山容を見せてなかなか豪快です。
途中にトイレと東屋のある休憩ポイントがあります。ここまでまったく登りがありませんので特に休憩することもないのですがこの先トイレもありませんからここで済ましておくと安心です。
支流の上流を覗く
東屋からわずかで亀ヶ淵です。通行止めのコンクリート橋やら対岸の歩けそうもない歩道の安全柵やらがあってちょっと雑然とした雰囲気ですが、それらは見ないことにして河床に降りると眼前に不思議な景観が広がっています。
複雑な岩の造形の隙間から流れが滝となって流れ落ちているのですがその滝壺が大きな甌穴らしく深くえぐられていったいどのくらいの深さなのか見当がつきません。
右の支流からの流れはさらに奇怪です。小滝の流が甌穴からあふれ出るような姿でまるで岩風呂からあふれている掛け流しのようです。その上流を覗くと同じような甌穴が奥まで続いています。傍らに花が供えられていましたが、この上流域へ沢登りでもして事故にあったのでしょうか。

一気に頂稜へ:
下武生の家々の向こうに男体山(右奥)
亀ヶ淵からは舗装道から山道となります。その支流に沿ってなだらかな登りとなっています。その支流もまた甌穴の連続で大きな淵の中にはその甌穴を生成した玉石が数十個も沈んでいました。なるほど巨大な穴になるわけです。
やがて沢から離れると急な登りとなってぐんぐん高度を上げます。やがて尾根状の地形になると急傾斜も緩んで竜神川源流部を見下ろし、また武生山方面を見上げながらのんびり歩けるようになります。登山道が二又に分かれる地点ではどちらに行っても武生林道に出られますが右方向の方が良く歩かれているようです。
やがてひょっこり舗装道に飛び出します。そしてその辺りは下武生の集落で畑が広がっていて人家が点在しています。
右手に展望台、左手に武生神社の石鳥居が見えます。
まずは武生山頂上を踏もうということで舗装道を左にとりました。頂上がどこか判りにくいですがとりあえず最高点とおぼしき場所を目指してうろうろ。どうやら感覚的に最高点は杉林の中らしいと判断して三角点を探し回りましたが見つかりません。地形図をよくよく見るとその先の小さな高みに三角点記号があってどうも最高地点にあるわけではないようです。舗装道脇なので尾根道というほどではないですが雑木の中に一応山道があるのでたどってみるとやはりそこに四等三角点がありました。たしかに低いながら先ほどの杉林より頂上らしい高みですし展望もそこそこ得られてここが頂上とするのは納得がいきます。
とはいえ、とてもとてもハイキングコースの目的地となる「山頂」とはほど遠いショボい雰囲気でとりあえず三角点に触れたというだけの山頂でした。
ガイドブックによっては山頂を三角点の位置ではなく武生神社の裏としているものもありますし、道路地図でも三角点位置と武生神社裏といろいろで混乱が見られます。国土地理院の地形図では少し離れてどちらとも取れるような位置に山名が記入されていて結局どこを山頂としていいのかよくわかりません。あるいは赤城山や榛名山などの例にもあるようにひとつのピークではなくこの一帯を総称して武生山と呼ぶのかもしれません。
それにしてもこのあたりの地形は不思議です。人を寄せ付けないような険しい沢から急峻な斜面を喘ぎ登ってたどり着いた頂稜部は台地と言っていいような平坦地で畑や人家が点在したのどかな景観が広がっていました。谷底から見上げると荒々しい岩峰、山上から見ると優しい里山、2つの顔を合わせ持った山域です。

武生神社拝殿
山上とは思えぬ立派な武生神社:
三角点から舗装道路(武生林道)を戻り先ほど鳥居前を通過した武生神社に寄りました。石の鳥居が真新しい理由はすぐに判りました。鳥居をくぐった先に無残に折れた鳥居の残骸が積んでありました。先の震災で崩壊したのでしょう。
参道を少し登ると左手の石段の上に山門が見えます。神仏混淆を色濃く残した神社でその山門には小さな仁王様が立ちはだかっていますしその先にはなんと鐘撞き堂まであります。
拝殿は山上の神社とは思えぬ立派なもので精細な彫刻にも驚かされます。背後の本殿は鮮やかな朱塗りでちょっと厳かな雰囲気ではありませんが、像や馬などの彫刻が目を惹きます。どの神社も創建当時はみな鮮やかな朱塗りだったわけで、ここもおそらく修復時に創建の時代に戻す意図で塗り替えたのではないでしょうか。


太郎杉
 
本殿の裏手に回るとその先に太郎杉と呼ばれる推定樹齢800年の大杉があります。さすがいくつもの時代を見つめてきた老杉だけあってその姿は植林地の杉と同じ種とは思えないほど勇壮なものです。枝は大きく張り出し現在も元気いっぱいです。

宝剣洞展望台から明山
宝剣洞展望台:
神社から舗装道を少し戻ると宝剣洞(ほうけんぼら)展望台が建っています。
明山、奥久慈男体山などが一望です。自分がいる場所はのどかな畑地の中なのに見下ろす竜神峡の沢筋は険しくまた相対する明山は岩場を竜神峡へと落として豪快なのがじつに不思議な感じがします。
この宝剣洞の名前ですが、武生神社境内で明和8年に宝剣が出土したことからその関連かと思われます。
【便利帳】 トイレ:竜神ふるさと村駐車場(冬期閉鎖)、竜神峡、竜神大吊橋
【寄り道】
竜神大吊橋(渡った先には何もない。(^_^; )
竜神大吊橋:
税金のムダ使いとか渡っても行き場がないとかさんざんな言われようの大吊り橋ですがここまで来たらやはり渡ってみたいですね。
高所恐怖症なのでとっても怖かったです。

ひたち南ドライブイン:
日立南太田IC近くの国道6号大和田交差点の東側、常陸太田からの帰りなら交差点を直進します。
お魚市場風のシーフードショップや回転寿司などとにかく安くて美味しいです。
イケメンスタッフです。と、ひたち南ドライブインさんはおっしゃっています。(^_^;
【収穫】(^_^; 28片 160g
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