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山王帽子山 太郎山 さんのうぼうしさん 2077m たろうさん 2367.5m

深い樹林の中の急登

以前、新薙コースを通って太郎山に登ったことがありますが、もう一つ山王峠から山王帽子山を越えて小太郎山を通り太郎山に達するルートがあります。夏山を控えて足慣らしにと出かけてみました。
なんだか山王帽子山から大下りしてまた登り返すのがもったいない気分ですが、その苦労のご褒美はちゃんと用意されていました。山王帽子山の深いコメツガ樹林や山王帽子山と小太郎山の鞍部付近の疎林の風景が素晴らしく、雨に降られてもかえってその雨に濡れた深い樹林の風情が好ましいくらいでした。
しかしほぼ終日降られてしまい、レインウェアを着ての急登に消耗してしまいさすがに駐車地に戻ってきたときにはヘトヘトでした。見下ろす戦場ヶ原は日が差しているというのに、ほんのわずかな距離でも地形によってこれほど天候に差があるものかとびっくりです。


         太郎山頂上

       山王帽子山から太郎山
【日程】 2013年7月14日
【山域】 日光
【天候】 雨 曇り
【地形図】  1/25000 男体山

【アクセス】 奥日光戦場ヶ原から光徳牧場方向へ。牧場を通り過ぎて山王林道を山王峠まで。
【駐車地】
峠の登山口付近の路肩にそれぞれ1台駐車できそうな余地が数カ所。
【コース】
山王峠登山口 - 山王帽子山 - 鞍部
- 小太郎山 - 太郎山 (往復)

約6時間(休憩含む) 一般向き
【メモ】
山王帽子山頂上
コメツガの深い森:
戦場ヶ原まではまずまずの空模様でしたが登山口に着いたら本格的な雨となりしばらく待機することにしました。待つこと小一時間、少し雨脚も弱くなってきたところで意を決して登山道へ。のっけからレインウェアを着る羽目になりました。
登山道はコメツガの森の中をひたすら登っていきます。樹林に阻まれて展望はありませんがそれだけ深い森だということでしょう。天候が不安定でいつもいつも雨に降られることの多い日光では雨に濡れてしっとりとした針葉樹の森がよく似合います。
道はよく踏まれていて歩きやすいのですが途中急登があって雨で滑って気を抜けません。
やがて傾斜もなだらかになって程なく山王帽子山に登り着きます。コメツガに囲まれた頂上です。ここまで登山口から1時間強というところです。


鞍部の疎林風景
せっかく稼いだのに大下り:
せっかく登った山王帽子山から鞍部めがけて大下りです。鞍部の先には小太郎山、太郎山が大きな山体をどっかと横たえています。これから雨の中あれを登るのかと見上げるとちょっと気持ちがひるみます。
鞍部に下り着くとそこには素晴らしい景観が広がっています。北方的景観と言ったらいいのでしょうか。コメツガとダケカンバの巨木の疎林がなんとも好ましい風景です。
ここからの小太郎山は見上げるような高さです。実際にかなりの急登でイメージしていた連山の縦走とはまるで違ってそれぞれ独立峰に登る気分です。
相変わらず深い樹林の中をひたすら登りますが、山王帽子山ではコメツガ一色だったのが太郎山上部ではシラビソが多くなってきます。この傾向は女峰山、大真名子山など日光のこのあたりの山の特徴のようです。
鞍部の先で右に旧ハガタテコースを分けますが、今はハガタテの薙が危険なので通行禁止となっています。すでに道型も消えかかっています。
しばらく我慢の急登が続き、やっとのことで登り着いた小太郎山は展望が開け雲に見え隠れしている男体山や戦場ヶ原などが雄大です。遠く足尾の皇海山も見えますが、見通しの悪い空模様なのでその先の遠望は無理でした。

小太郎山からは気の抜けない稜線をたどる:
肝を冷やした剣が峰を振り返る 
 

小太郎山の先は難所の剣が峰です。
左(北)に巻道があってそちらなら危険は少ないのですがそれに気付かず剣が峰をそのまま直進して通過してしまいました。(帰路に気付きました。)
手がかりも少なく万一転落したら一気に数十メートルというような岩場です。通過後に振り返って眺めたらぞっとしました。(剣が峰ルートは絶対におすすめできません。小太郎からの下りで岩にしっかりルートが矢印で示されています。それに従って左に曲がれば危険はありません。行く手の岩に気を取られてうっかり見逃してしまいました。)
その先もやせ尾根で、覗くと一気に断崖が落ちています。木々があるため恐怖感はまったくありませんが注意は必要です。
そんな急崖をカモシカが通過した足跡がたくさんあって、あいつらの運動能力はどんなだと呆れていまいます。なんの理由でわざわざ危なっかしい場所を通るのでしょうか。
稜線ではシャクナゲがちょうど開花時期を迎えていました。ハクサンシャクナゲですのであまり派手さはありませんが、雨に濡れて風情は満点です。当たり年ではないようで花は例年よりは少なめでした。
他にもコゴメグサ、ツマトリソウ、キバナノコマノツメ、ミヤマダイコンソウ、オトギリソウなど亜高山、高山の花が多く見られました。とりわけマルバダケブキが多くまだ開花はしていませんが蕾を膨らませていました。
小太郎から太郎山までは稜線漫歩かと思い込んでいましたがけっこう登り下りがあってさらに一汗かかせられます。ただ、いろいろ高山植物が多いのであと1,2週間もすれば急登も忘れて楽しい道になるはずです。

    ハクサンシャクナゲ 

     ミヤマダイコンソウ

待望の太郎山頂上:
最後の急登で新薙コースを合わせたら待望の太郎山頂上です。
石祠が2つ、三角点、いくつかの山名標があり小広い平地になっています。
天候がよければ展望も得られそうですがいかんせん自分のいるこの太郎山から雲が湧くのですから時々さっと開けたかと思うとまたすぐに隠されてしまう断片的な展望しか得られません。
しばらく待ってみたものの天候の好転は期待出来ないので下山にかかりました。
小太郎あたりから雨も上がってずっと頂上を見せなかった男体山の全容を望むことができました。また社山など中禅寺湖南岸尾根からさらには皇海山、袈裟丸山など足尾の山々、そして日光白根山、温泉ヶ岳も姿を現してくれて、やっと日光の山々を見渡すことができました。

端正な姿の男体山
 
【便利帳】 トイレ:光徳牧場
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