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奈良部山・彦間川源流から ならぶやま 985.4m

倒木が覆った沢筋で悪戦苦闘 稜線はツツジの海

2013年に芽吹きの彦間川を遡って彦間川の最初の一滴を確認し、稜線に突き上げてから丸岩岳、野峰と繋いで縦走したことがあります。その時の源流部の美しさと言ったら。また今年もその景観を見ようと出かけました。今回は稜線から奈良部山を経て奈良部山南西尾根を下って周回コースを巡ろうと計画しました。
しかし、この冬の大雪の被害はすさまじく倒木が行く手を遮断して林道歩きさえままならず、林道が終わって沢道になったあたりからは折り重なる杉の倒木をくぐったり乗り越えたりと悪戦苦闘が続きました。周回して下山したときにはなんと10時間半もかかっていました。
しかし、そのご褒美はちゃんと用意されていました。稜線の行けども行けども続く満開のツツジ。ミツバツツジ、アカヤシオ、シロヤシオ、ヤマツツジが勢揃いで迎えてくれました。ほとんど人の入らない山域でこうして人知れず咲き誇る花々、これらを独り占めしてもったいないようなありがたいような。

一般ハイキングコースではありません。

関連ページ
奈良部山 http://www.kimurass.co.jp/narabu.htm
彦間川・丸岩岳・野峰 http://www.kimurass.co.jp/hikomagawashukai.htm

      奈良部山を振り返る(縦走尾根から)       ヤマツツジ
【日程】 2014年5月6日
【山域】 安蘇
【天候】 曇り

【アクセス】 田沼(佐野市)からなら田沼桐生線、足利からなら須花トンネル経由で飛駒へ入り、番場で梅田(桐生)への道を左に、蓬山への道を右に分け直進すると右に根古屋森林公園、左に永台寺へと分かれるY字路があり、そこを永台寺方向へ。
永台寺を過ぎさらに直進して黒沢集落
を抜け最奥人家の先で西沢、東沢に別れるのでそのあたりに駐車。
林道の状況は年々悪くなっていますのであまり奥まで入り込まないうちに駐車する方が無難です。この駐車地から少し入った地点に谷側の路肩が崩れかけている箇所があります。
また周回する場合、稜線の踏み跡も薄いため尾根を下りすぎることもあり得ます。駐車地まで登り返す羽目にもなりかねません。
【駐車地】

西沢、東沢の分岐前が広くなっていて駐車可能です。ここから左に折れて西沢へと入ります。
【コース】
西沢・東沢分岐 - 林道終点 - 彦間川源頭
- 林道 - 奈良部山 - 南西尾根
- 新栃木線169号鉄塔 - 林道 - 駐車地

全行程 10.5時間
【メモ】
彦間川源流:
彦間川源流については
彦間川・丸岩岳・野峰 http://www.kimurass.co.jp/hikomagawashukai.htm 参照

林道や沢筋を覆う倒木
今回は周回コースで下山尾根が未知のためあまり林道に入り込まずに西沢・東沢分岐に駐車しました。
他にも車がありましたが釣り人でした。
林道も最初こそどうやら車も入れそうな状況でしたがそのうち斜面から倒れ込んだ倒木が道をふさぐようになりました。
林道が尽きて沢沿いの道になるともう植林地は惨憺たるありさまでほとんど倒木をくぐったり乗り越えたりでまともに歩けるのはほんのわずかな落葉樹林の場所だけでした。
ただでさえ小滝が連なって難儀な道なのにこれでは時間ばかりかかっていつになったら源頭までたどりつけることやら。おまけに前夜は雨でしたので泥だらけ。泣きたい気分の源流遡行となりました。
それでも霧に包まれた新緑はいいもので、立ち止まって眺めると少しだけ気分も立ち直ります。

このコースは飛駒にある根本山神社の里宮から根本山(奥宮)に至る参道跡ですからところどころにその痕跡が見られます。途中4カ所ほどで丁目石を見ました。また橋が架かっていたような石組みやいくつかの石祠も見られました。かつては隆盛を極めた根本山ですからこの参道も多くの人たちが歩いたはずです。いまはもう誰も歩くこともなく自然に回帰しています。
彦間川もやがて源流の最初の一滴となります。その湧き水はいつもはちょっと大きめの岩の下から湧き出ているのですが、今回は前夜の雨のためにその岩の数メートル上の場所からも湧いていて、ここが源流だとは言えないようなことになっていました。(^_^;
稜線に突き上げると残念ながら無粋な林道に飛び出します。あたりはトウゴクミツバツツジが群れ咲いていました。

      倒木さえなければこんなきれいで優しい沢
    登れずに高巻きした滝

奈良部山:
林道はやがてプツンと終わって稜線の道に合流します。あたりは一面ミツバツツジの海。
一旦ぐんぐん下ってからやせ尾根になります。登り返す尾根の先はいかにも深山らしい黒木に覆われた岩峰でむしろ奈良部山より風格のある前衛峰です。
奈良部山北鞍部の平坦尾根
巻き道もありますがここは高度感のある稜線を登ってみたいものです。びっしりとヒメイワカガミが岩がちの斜面を覆っています。まだ花期には早いようで1,2輪見られたのみでした。
前衛峰の下降はちょっと緊張しますが下りきるとそこもミツバツツジに彩られた鞍部で、そこから奈良部山の登りが始まります。
見上げるような感じの割にはなだらかでたいした登りではなくすぐに頂上に登り着きます。
頂上手前の平坦尾根は草付きの落葉樹疎林で心和みます。ほとんど人の入ることもないこんな尾根ではっとするような印象深い景観がこの先も続きます。
奈良部山は普段はなんの変哲もない静けさだけが取り柄のような頂上です。しかし、この季節だけは違います。頂上一帯はトウゴクミツバツツジに包まれて夢のようです。これを今日見たのは私たちだけだろうなと思うとなんだか申し訳ないようですが、登路の苦闘のご褒美でもあります。
奈良部山頂上
頂上でゆっくり花を楽しみたいところですが彦間川で時間を食ってしまって既に午後2時を過ぎてしまいました。この先の未知の尾根を縦走することを考えるとそうそう時間をつぶすわけにもいきません。
奈良部山からは尾根が二手に分かれて左は西沢と小戸川を分ける尾根、右は西沢と東沢を分ける尾根になっています。また北東へも尾根が延びていて、かつて奈良部山で会ったハイカーがそのままその尾根を下山して麓で再び出会ったことがありましたがあまりに急峻でひどい目にあったと話していました。現実的にはコースとして選べないようです。

縦走尾根:
シロヤシオ

奈良部山からはツツジの花に包まれた快適な尾根が続きます。ヒノキ植林地になることもありますがおおむね落葉樹疎林で道は踏み跡程度ですが下草も薄く藪もないのでスタスタと足がはかどります。
ときたま樹間に彦間川源流部を見下ろすことができますがよくぞ歩いてきたなと思うほど山深く谷を刻んだ長大な沢です。
相変わらずミツバツツジが群れ咲いていて、さらにはアカヤシオ、シロヤシオもちらほら混じって咲き競っています。
高度を下げるに従ってヤマツツジに代わりますがどこまでも続くツツジの尾根です。
途中485m峰に「彦馬山485m」と記された古い山名板がありました。聞いたことないなぁ、それに彦間か飛駒かどっちかにしろよ、とツッコミ入れて通り過ぎました。(^_^;
この485m峰からの下りで少し方向を違えて右に下る小尾根へ引き込まれましたがその先で一気に高度を落とすのですぐに間違いとわかり修正しました。やや左に下るのが正解です。
この高みを越えるとこれまでののどかな尾根から一変してやせ尾根になり小さな登降を繰り返します。少し足下に注意をしなければなりません。両側の斜面は一気に谷へ落ちてその先に新緑の落葉樹林の谷が続いています。ひしひしと山深さを感じます。
通過できなかった岩場
尾根がさらに危なっかしくなるとその先の岩場でとうとう行き詰まりどうにも通過できません。左の谷も断崖で右の谷側に巻くしかありません。その下降も落石しやすく複数人で下ることは禁物です。先行が通過してから次に下降開始なんてことをやっていたらかなり時間を費やしてしまいました。
ここさえ通過できればあとはルートを間違えないように尾根通しに下るだけ。とはいうものの岩場の先でなだらかになったため気が緩んだのかまたルートを違えてかなり下ってしまいトラバースして尾根に戻るミスを繰り返してしまいました。
この先からは植林地内の平坦尾根になりしばらくダラダラとたどると突然送電鉄塔が現れます。林道で確認した新栃木線169号鉄塔です。ここからはしっかりした巡視道となり一気に林道に戻ることができます。
あとは1.5kmほどの林道歩きで駐車地まで戻りました。すでに午後6時を回っていて、じつに10時間半を要した悪戦苦闘の奈良部山周回を足をさすりながら終えました。
【便利帳】 コンビニ:田沼の町を出てしまうともうありません。国道を走っているうちに買い物は済ませておきたいです。

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