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二子平 ふたごだいら

袈裟丸山群に寄り添うように人知れず夢の別天地
二子山の直下にひろがる二子平。かなり前からその存在は聞いていたものの渡良瀬川沿いの国道からの登高を考えると登る気も起こらずずっと遙かな山のままでいました。ところがある日、地形図を眺めていてふといい考えというか横着者のアイデアが浮かびました。二子山から下って行ったらどうなのか、きっと労せずにたどりつけるに違いない。
袈裟丸山を目指すハイカーに混じって折場口から登り、賽の河原先で袈裟丸山とは逆の方向へ折れ二子山を越えて二子平まで、けっこう長丁場で労せずと言うわけにはいきませんでしたが、そこには私たち横着者にも素晴らしい別天地が待っていてくれました。

一般ハイキングコースではありません。一部登山道が不明瞭です。


     二子平

    アカヤシオ(ツツジ平)     
【日程】 2017年5月14日(こちら)
2025年5月4日(こちら)
【山域】 足尾
【天候】 霧雨
【アクセス】 国道122号を草木ダム先の沢入で寝釈迦の道路案内に従って左折。林道を途中で塔ノ沢への道を分けてそのまま登って折場登山口。
【駐車地】

登山口前に駐車地。
シーズン中は満車になりますので前後の路肩に停めるしかありません。
途中駐車している車を見たら先へ行っても駐車余地はありませんので早めに路肩の余地を探してあとは歩く方が得策です。
【コース】

折場口花 - ツツジ平 - 賽の河原 - 落葉松林
- 二子山 - 二子平 - 台石山(二子山東峰)
- 二子山巻き道 - 折場口
(往復)

実行程約6時間 ベテラン向き
【メモ】
2017年5月14日
アカヤシオの道:
賽の河原付近のアカヤシオ

天気があまりよくないせいで折場口はアカヤシオのシーズンというのにそれほどの混雑ではなく登山口近くに車を停めることができました。それでも大型バスが何台か入って来ていて相変わらずの人気です。
ここからは何度登ったか知れないいつもながらのアカヤシオの道です。
今年はなかなか花付きもよくツツジ平、賽の河原付近ではちょうど満開で溢れんばかりに咲き乱れていました。
毎年同じ花が咲くわけでもう見慣れきってしまったアカヤシオですが、やっぱりこの艶やかさ、清楚さはいいものです。ほぼ黒木(針葉樹)に包まれた渋い袈裟丸山群がこの開花期だけはぱっと山全体が華やかになります。

幻想的な小沢
 
初めて足を踏み入れる二子平:
賽の河原からなだらかに登って右手がカラマツ林になったら右に折れてカラマツ林を突っ切って(巻き道になっています。)二子山への尾根に出ます。カラマツ林の中は途中まで踏み跡もありますが途中からその踏み跡が消えたらあとは適当にやや左方向に進めば防火帯のある尾根に出られます。
はっきりしない巻き道を厭うならカラマツ林の先のロボット雨量計付近から右に折れてもこの防火帯に出られます。
この先はずっと防火帯をたどります。延々と続く防火帯、よくぞ造ったものです。そのまま防火帯を辿れば二子山です。
二子山で休憩していよいよ二子平へと足を踏み入れます。
二子山からはっきりした踏み跡が下っていきますがこれは二子山東峰(台石山)を目指す踏み跡なので途中から右に折れる必要があります。私たちは勢い込んで台石山との鞍部近くまで下ってしまいましたが注意深く見ていけば右に防火帯が下っていたかも知れません。(未確認)
仕方なく踏み跡もない斜面を本来の尾根筋までトラバースして軌道修正するとまた防火帯が現れました。傾斜は急ですが薮もなく歩きやすい尾根と言っていいかもしれません。
一旦なだらかな尾根になってその末端で左に折れるとやや急な斜面となり、そこを下ると突然目の下に平地が広がっています。ついにずっとずっと気にかかっていた二子平の一角に下り立つことになります。

静寂の二子平:
霧に包まれた平地には小川が流れその両岸にはズミやダケカンバの疎林が続き夢のような世界が広がっていました。地表はふかふかと芝草やコケに覆われてどこを歩こうにも小さな命を踏みつけてしまいそうです。
とりわけ美しいのは原の中央を静かに流れる小川の景観です。まるで西欧のおとぎ話に語られる森のようだと(見たこともないのに)連想してしまいました。
まだここでは季節が春になったばかりなのでアカヤシオ以外の花は見られませんがズミの季節になればまた違った景観になるはずです。

    二子平の小沢

    草付きの二子平
流れに沿ってさらに進むと左手が高くなって芝草とコケの斜面がなだらかに登って行きます。疎林にはアカヤシオもあって、たぶん今年は私たち以外には誰に見られることもないはずですがそんなことは関係ないように静かに咲いていました。
その高みに登ってみると花崗岩とその表面を覆うコケが素敵な場所で、そこが二子平の縁でその先は急な斜面になって高度を落としていました。
いつまでも居たい二子平ですが、これから二子山まで登り返さなければなりません。
台石山(二子山東峰)
台石山:
二子山直下から右にトラバースして二子山と台石山の鞍部に出てそこから台石山まで一気に登ります。このあたりが今日の行程で一番つらい所です。
台石山は二子山東峰とも呼ばれ、西峰(本峰)とで双耳峰を形成していてそれが二子山の山名の由来です。
台石山頂上はアカヤシオに包まれていました。
本来展望が楽しみな山頂ですがあいにく霧に包まれて何も見えませんでした。
台石山の山名の由来のテーブル状の大岩がコケに覆われてでんと山頂の一角を占めています。

チョッケン岩
 
以前からこの付近にチョッケン岩と呼ばれる奇岩があると聞いていましたが、何度も登っているのに出会ったことがありません。いつもこの台石山は北側の展望ばかりが気になって景色を眺めてさっさと下山してしまうのがその理由なのかも知れませんが、今回は展望もないので周辺をうろうろしてみました。と、頂上からわずか東へ下った場所に奇岩が鋭く天を突いていました。これが50年も前から気にかかっていたチョッケン岩、まさに奇岩です。こんな頂上近くにあったとは。今までなんで気付かなかったんだろう。
かつてこの付近はあまり樹木が茂っていずに麓の餅ヶ瀬からこの奇岩を見上げることができたそうです。チョッケン岩という奇妙な名前はたぶん「直剣」なのかと想像できますがまさに剣のような鋭さです。
さてそういつまでもこんな山深い場所で遊んでいては帰れませんので腰を上げることに。
西峰、東峰の鞍部まで下ってみたところ左下方から右上方へ確かな踏み跡が通じていました。方向からして餅ヶ瀬から登ってくるかつての山道の痕跡のようです。延々と続く防火帯の存在ひとつとってもこの一帯は現在より麓の人たちに身近な場所だったはずです。
この道は二子山(西峰)の急登を回避して賽の河原方向へ行く巻き道となっています。昔の山道はもちろんなにかの所用のためで現在のハイキングのような山を楽しむためではありませんのでことさら頂上を踏む必要もないということでしょうか。そんな道は今の私たちにも(特に帰路では)大助かりです。
あとは下り基調の道を辿って折場口までのんびり戻るだけ。
二子平に行くにはちょっとずるっこのコースではありましたが、大満足の一日となりました。

2025年5月4日
アカヤシオに包まれてたどる袈裟丸山群の派生尾根:
アカヤシオ満開(賽の河原先)

前回はあまり天候に恵まれたとは言えない日でしたので今度こそ好天のもとを歩きたいものだと思って天気予報をにらみながら日程を決めました。異常に季節の足が速く前週の偵察でアカヤシオがもう満開になりそうだと判断したこともあってこの日が最適と踏んでの日程です。
皆さんまだ開花していないと判断しているのか折場登山口の付近は車もそれほどの混雑は見られず駐車場からはみ出した車はそれほど多くはありません。
いつもの弓の手コースを一気に登ってつつじ平、賽の河原に登り着くと満開のアカヤシオが迎えてくれました。
この満開の状態はこの先ずっと二子平まで続いていました。今年の季節の足の速さにびっくりです。と同時に一昨年に続き花付きが大当たりでうれしい限り。


  毎年なぜか花付きが抜群な貴婦人と呼ばれているアカヤシオ

      アカヤシオ群落(賽の河原先)

カラマツ林をトラバースして二子山へ
二子山へ:
賽の河原を過ぎてアカヤシオの緩斜面をたどると笹帯の先で気持ちのよいカラマツ林に出ます。ここで右に折れて踏み跡を探してトラバースすること数分、防火帯の続く二子山への稜線に飛び出しました。踏み跡が見つからなければ適当にトラバース気味に歩いているうちにいずれ防火帯の稜線に達します。
あとは緩い登降を何回か繰り返して最後に少々登ると二子山頂上(西峰)。昔は展望峰だったと聞きますが今は樹林の中の静かなピークです。

 
   防火帯の尾根
 
    二子山頂上

二子平
 
二子平:
いよいよここから二子平を目指して下降する踏み跡をたどります。あくまで防火帯を外さないことが肝心です。
思ったより長い下降で道を外してないかと心配になる頃前方が疎林となるといよいよ二子平の一角に降り立ちました。
素晴らしい景観を造っていた小沢は雪が少なかったのか小雨の影響かほぼ涸れていましたがそれでもこんな山中にこんな広大な平地が存在していることが驚きです。またそこを訪れる登山者もほぼ皆無だということ、そこに今私たちがいること、こんなうれしいことはありません。袈裟丸山群の珠玉の奥庭です。

          二子平

    ニホンジカがお見送り 

二子山巻き道のアカヤシオ
二子山巻き道:
二子平でしばし遊んでさて帰りはどうしようか。もう一度二子山に登り返すのはごめんだと全員の意見一致。巻き道をたどることにしました。二子平から二子山へ戻る登り返しの途中に右前方に分かれる踏み跡がありそれをたどると二子山西峰と東峰の鞍部に出ました。そのまま注意深く切れ切れの踏み跡を探しながら西峰を巻くように進むと西峰に登ることなく稜線に戻ることができました。たいした省略にはなりませんがアカヤシオの群落を通過するので楽しい道です。
稜線に戻ったらあとは来た道を忠実に戻るだけ。相変わらず咲き誇るアカヤシオをカメラに収めながらのんびりゆったり花旅を締めくくりました。
【便利帳】 トイレ:道の駅くろほねやまびこ、草木ダム、折場口
コンビニ:国道122沿い 道の駅くろほねやまびこ隣
【収穫】
17片 310g (^_^;