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  エビ山1744m

明るい野反湖を眺めながらのんびり展望ハイク
野反湖周辺の山は群馬の奥の奥に位置するためアプローチはちょっとたいへんですが、1500mの高みまでクルマで行けるおかげでいきなり高山の雰囲気にひたることができます。のんびりハイクにはまさにうってつけです。底抜けに明るい野反湖を終始眺めながらの稜線歩きは気分まで開放されて思わず足どりも軽くなります。
とはいえ、簡単なハイキングの対象となるのは野反湖のほんの周辺だけで、やはりここは群馬の最奥ですから自然の真っ只中の野生の領域であることには変わりありません。過去、ハイカーが道に迷ったあげく長野県側に下って遭難騒ぎとなった例もあります。一般ハイキングコースは湖をとりまく八間山、エビ山、高沢山、三壁山、ちょっと頑張って白砂山、さらに多少山慣れたハイカーなら大高山までがせいぜいで、道をはずせばいきなり人跡稀な山域となることを念頭に置かなければなりません。そのことは裏を返せば自然の無垢な姿がすぐそこにあるということでもあり、カモシカ、サルなど野生動物に頻繁に遭うことができます。また夏ならばさして苦労することなくたくさんの高山植物にふれあうことができます。
紅葉の足取りが少々遅めとなって10月中旬にやっと色づいたというニュースを聞き、仲間と弁天山、エビ山とつないでのんびり歩いてきました。9月に暑すぎた天候のためかあまり鮮やかとはいえませんが、それでも黄色に色づいたダケカンバと緑の笹のコントラストがなかなかきれいでした。
ちなみに、野反峠が列島の分水嶺ですので野反湖は日本海側ということになります。なお、私たちは「エビ山」としていますが、案内標識板は「恵比山」となっていました。また、野反峠方向を示す標識には富士見峠とありました。別の峠のことなのかどうかははっきりしませんが、野反峠のことならいつからそうなったのでしょう。富士見峠という凡庸な名称はちょっと興ざめです。
【日程】 2005年10月16日
【山域】 上州
【天候】 晴れ
【地図】 野反湖
【アクセス】 渋川ICから主要地方道35号渋川吾妻線、国道145号、長野原草津口から国道292号、さらに国道405号と小刻みにつないで野反湖まで。
ちなみに湖畔道路は国道405号で、長野県側と結んでいるのですが、ダムの地点から長野県の切明温泉あたりまで途切れてしまいます。群馬県には清水峠のR291、尾瀬のR401、四万温泉のR353など同じ例がいくつかあります。国道となった時点ではいずれ繋ぐつもりだったのでしょうか。
【駐車地】 野反峠の売店前とその一段下に駐車場。数十台。
【コース】 野反峠 − 弁天山 − エビ山 − 湖畔 − 野反峠
実行程約3.5時間
                エビ山頂上 遠景は草津白根、横手山

カエデ紅葉

野反湖と八間山

【メモ】 クルマで一気に駆け上がる野反峠:
ダケカンバの八間山斜面

運転者にはうんざりするほど遠い野反湖ですが、同乗のメンバーには居ながらにして1500mまで登れてしまうのでラクチンハイクにうってつけです。とりわけ、野反湖を一望する野反峠は列島の分水嶺ですから強風と雪のためか樹木もまばらで北方的景観がじつに好ましい珠玉のエリアです。夏には賑わいを見せるこの一帯も紅葉のこの時期になると観光客もまばらで、意外に静かな高原散策を愉しむことができます。人も少なくなったせいか、峠手前では2頭のカモシカに遭いました。
朝、9時半、2,3のグループが八間山目指して登って行くのを横目に、峠の駐車場で準備をしてから反対の弁天山目指して出発しました。人気の八間山とは対照的にこちらに向かうハイカーは私たちだけのようです。
目覚めたときは土砂降りの雨でしたが、峠に着いたときには青空が広がり湖面を明るく照らしています。それにしてもすごい風。帽子を被っていられません。
今年の紅葉は9,10月に暑かったせいであまり鮮やかとは言えませんが、それでもほぼダケカンバ純林の野反湖周囲の山々は黄に染まっています。目指す稜線はなだらかで、眺めただけで今日一日ののんびりを約束しているようなものです。はじめからすっかりのんびり気分で気合いなし。(^_^;

展望を楽しみながらのんびり歩ける稜線:
弁天山展望・エビ山、高沢山
弁天山までは峠からだらだらと緩い登りのまま、あっという間に着いてしまいます。。
峠から歩き始めてすぐ、いずれどうせ一緒になるだろうとメンバーが右と左に分かれましたが、右に行った連中は弁天山の頂上を踏まずに巻いてしまいました。分岐には標識もありませんので注意が必要です。弁天山は好展望ですので、ぜひとも巻かずに頂上を踏んでいきたいものです。
石仏がある頂上からは大展望を楽しめます。横手山、草津白根、湯ノ丸山、浅間山、浅間隠山、榛名山、吾妻川沿いの山々、小野子岳、赤城山、上州武尊山、見慣れぬ方角からの展望は新鮮です。あれれ、浅間隠が浅間の左側に、湯ノ丸が右側に見えます。草津の町も見えますが、なんとまあ高い位置にある町なんでしょう。
紅葉せぬまま散ってしまった葉が登山道を覆っています。今年の紅葉はどうも芳しくなさそうです。それでも数は少ないながらカエデ類は真っ赤に色づき、ナナカマドはすでに実を朱くしていました。
しばらくは緩い稜線のままダケカンバと笹の織りなす景観を楽しみながらののんびりコースが続きますが、一旦大きく下って笹原の広い鞍部を抜けるとやっと大登りとなります。この笹の鞍部は周囲をダケカンバ疎林に囲まれ、右手に湖を望み、さらに行く手に笹の急斜面を見上げて、なかなか素敵な雰囲気です。
ここから笹の中の急登を2段、今日のコースの中では唯一ちょっと苦しい登りが待っています。しかし、この登りも背後のダケカンバの黄葉を振り返りながら登ればさしてつらい登りと言うほどではありません。登りの途中から湖と八間山がよい被写体となっています。
一旦平坦になってさらにもう一回急登をこなすと待望のエビ山頂上。

草付きの小広い頂上からは高沢山方面の展望:
エビ山頂上・白砂山遠望

頂上は芝草に覆われた小広い平坦地で、湖岸キャンプ場方面と高沢山方面との分岐点となっています。
北側に高沢山が大きく視界を占めています。高沢山の左手にはかもしか平の草原と笹原も見えます。高沢山一帯の景観はここまでのダケカンバ疎林とは一変して笹と針葉樹の疎林でいかにも北方的景観が濃く、上州ではちょっと得難い眺めです。普通、エビ山は高沢山、三壁山とつないで歩くことが多いようですが、私たちはすでにその気全然なし。すっかりのんびり気分です。(^_^; 
昼食をいただきながらぐるり眺めると、高沢山ばかりでなく、西に草津の山、東に八間山が間近で、さらに八間山の左手奥には白砂山も頭を覗かせているうれしい展望です。白砂山は野反湖から延々稜線をたどった先にあるかつての秘峰で、野反湖までの道路整備のおかげで楽に行けるようになったとはいえそれでも今も遠い山には変わりなく高山植物や野生動物の多い素晴らしい山です。

湖岸をたどる:
湖岸からエビ山
頂上からは往路を戻りましたが、急斜面から見下ろすダケカンバの色が午前より数段美しく、黄葉が半日で進んだのかあるいは光の方向の変化のいたずらか、思わず歓声をあげるほどでした。真っ赤に染まった紅葉もきれいですが、やや渋めのダケカンバの黄もまた趣があるものです。
笹原から湖岸方向に分岐する道をたどって湖岸道路に出ました。このまま野反峠まで歩道が続きますが、整備された道を嫌って私たちは湖岸に降り、そのまま水際を歩きました。初めこそ砂浜でしたが、そのうち角張った石の浜となって歩きにくいことこの上なし、結局、山歩きよりこちらで疲れてしまった感じです。でも、湖岸から見る周囲の樹林や湖面の雰囲気も素晴らしく、ムダ歩きでは決してありません。
最後に峠までの急登が待っていたのは当然でしたが、ちょっとここで一汗かくことになります。この最後の登りから見た弁天山斜面の黄葉は見事でした。
【便利帳】 トイレ:駐車場脇
売店:駐車場脇
コンビニ:長野原草津口から国道292に入るとありません。渋川や原町あたりで済ましておきましょう。飲料水などは六合村の道の駅で買うことができます。
【収穫】(^_^; 29片 240g 靴底(@_@) どう帰ったんだろう。
軽登山靴は接着剤が劣化すると靴底がはがれます。こんな時には細引き紐があればグルグル巻きにしてどうにか下山できます。ぜひザックの底に細引きを。他にもいろいろ使い途がありますし。
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