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出川源頭岩峰群(1133m)・舟石峠集落跡 豪快な岩峰と集落跡をつないで

(2001−11−4)足尾の備前楯山に対峙して低いながらも魅力的な岩峰群が連なっています。出川の源頭を形成している山群ですので仮に出川源頭岩峰群としておきます。一方、舟石峠を挟んで、ミズナラの深い森の中に銀山平側には舟石、本山側には黒石という二つの銅山住宅跡があります。ススキの揺れる時期にその一角に立つと、なんとまあこんな山奥にまで人が住んでいたのか、とかつての銅山の盛衰を思って感慨深いものがあります。
岩峰群の1峰からヤセ尾根を通って2峰、3峰とつなぎ、最後に黒石集落跡まで周回するルートは多少の危険はありますが山慣れた方にとっては楽しくまた印象深い半日となるはずです。

(2004−11−18)
ベテランの仲間の同行を得て再訪です。単独で歩くと寂寥感がひしひしと迫るこの岩稜も仲間と登れば小気味よい楽しいコースとなります。
あ、鹿だ。仲間の声に振り返れば向かいの斜面を数頭の鹿の群れが登っていきました。下山にとったミズナラの樹林帯では熊棚や熊の糞などもあって、緑が失われたと言われる足尾もそれはほんの一部で大方は自然豊かな森が広がっていることを実感します。

(2018−9−24)
久しぶりに出掛けてみました。最初に足を踏み入れたときからあまり変わっていないことに安堵しましたが、それでもわずかながら人の歩いた気配もあってうれしくもありほんのちょっぴり残念でもあり、と複雑な気分になりました。Web上で紹介した時点で同じ感動を共にするハイカーを思っていたわけですから人が入って当然なのですができればいつまでも人の気配がほとんどない山であって欲しいのも本音です。
こんな山に入り込む同じ視点を持つハイカーと会ってみたい気もしますが、しかしこうして靴跡だけでつながる淡い仲間のままというのもまたいいものではあります。

一般ハイキングコースではありません。危険箇所があります。

「出川源頭無名峰」「舟石峠」は内容が本ページと重複するため削除しました。
【日程】 1996年10月13日
1997年10月11日
2001年11月4日(こちら)
2007年11月18日(こちら)
2018年9月24日(こちら)
【山域】 足尾
【地図】 1/25000足尾、中禅寺湖
【アクセス】 国道122号で足尾に入りわたらせ渓谷鉄道をくぐってすぐ左折すると銀山平方面。
そのまま足尾バイパスを通過し、日光方面に曲がらず間藤経由赤倉へ。赤倉から左折すると本山坑跡方面。
銀山平からは舟石峠を越え大きく右にカーブする地点から荒れた林道が分岐しています。ここ以外にこのような林道はありませんからすぐ分かるはずです。
本山から入るとこのカーブで眼前に岩山がのしかかるようにそびえていますからわかります。
【駐車地】 路肩が広くなっています。
心配なら舟石峠下の駐車場に置いて歩いてもさほどの距離ではありません。
(写真の背後が第1峰)
【コース】 出川出合−堰堤−第1峰−第2峰−第3峰−黒石集落跡−林道
 (全行程3時間程度)

     


        第1峰を目指し

      第2峰の尾根

       豊かな樹林帯(下山にとったルート)

【メモ】 (2001年11月4日)
荒れるに任せる林道:

堰堤工事と植生工事のための林道はその使命をおえたようで、荒れるにまかせ刺の木が密生し所々崩落しています。ほんの2〜300mほど進むと堰堤が現れその道は終わります。以前はその堰堤前で右に登る道があり
頂上 向かいの高みは中倉山 右奥大平山
ましたがいまは荒れた沢と化していました。さらに右上の堰堤を目指して道路跡のイバラ道を登ると堰堤手前左手に踏み跡を発見できるはずです。これはたぶん堰堤上部の植生工事の時にできた踏み跡かと思われます。

岩を直登して一気に第1峰へ:
最初は歩きにくいガレですがやがて一枚岩の爽快な急登となりぐんぐん高度を上げていきます。右手の窪の縁を使うか、豪快に岩を直登するか、あるいはうまい具合についている鹿道を利用するか好みのルートを選択すればいいと思います。だだ窪には植生工事で作った土留めに根締めの草が植えられていますのでくれぐれも足を踏み入れないようにしなければなりません。(この土留めもかなり流出してしまっていて、植生工事の難しさが見て取れます。)
この一帯は岩峰群とはいっても鉱毒によって形成されたハゲ山ですから西上州の岩峰群とはまた趣を異にしているわけで、手放しでその豪快さや爽快さを喜ぶという気にはなれません。
登るほどに急峻になって、万一コケたら下の堰堤まで転げ落ちそうな感じですが、幸い岩質が堅くフリクションが小気味よく効いて滑りにくく見た目より危険はありません。

頂上からは空撮のような展望:
2峰を目指して(撮影あまな氏)

一気に登り詰めた頂上は足下が仁田元沢に逆落としのように切れ落ち、その向かいに中倉尾根のでっかい連なりがオロ山を経て庚申山方面につながっています。
社山、半月山を前景にその中央には新雪の男体山が意外な近さで望まれます。三川堰堤、赤倉の町、赤倉山、その奥右手には禅頂行者道、前日光の山々が延々と続いています。また見上げれば備前楯山にはハイカーが豆粒のよう。さらに舟石峠の向こうには小法師尾根、その隙間には奥袈裟、小丸山、二子山が頭を覗かせています。なんとも素晴らしい展望です。
あたりには植生工事の索道に使ったのか錆びたワイヤが転がっていて、それがさらに荒涼とした雰囲気にさせていました。

第2峰に行くにはちょっとヤバそう:
そこから第2峰を目指すのですが途中のナイフリッジががかなり危なそうに見えます。とにかく行けるところまでと思って一気に鞍部まで駆け下り様子を見ると、うまい案配に右が切れ落ちていると左に、左が落ちていると右に、という具合でなんとか通れそうな気配です。
とはいえ、つっころんだらタダでは収まりそうもないヤセ尾根ですから慎重に足を運ばねばなりません。第2峰の
3峰から2峰、1峰 背後には社山、男体山、半月山、赤倉山 
登りは浮き石が多く、折りしもの強風でさらに気を使いました。
第2峰に登り着くとここからの眺めは主峰だけあってまた格別。ここから見る第1峰は一枚岩の意外な大きさです。また目と鼻の先の第3峰は松を配して一幅の墨絵のようです。
第3峰からの眺めも鋭く天を突く2峰を間近にしてまたなかなかの雰囲気です。ここまで来ればほっと一息、松の下でゆっくりお昼にしました。
あたり一帯は鹿の糞だらけで、縦横に鹿道が走り幾筋もナイフリッジを越えています。何のためにこんな困難な道を越える必要があるのか、鹿クンの考えることは分かりません。

かすかな踏み跡はいつのものか:
ここからは樹林の中の下山となります。かなりはっきりした踏み跡が残っていますが、いったいこんなルートに何の必要があってできた踏み跡でしょう。しかしやがてそれも樹林の中に消え、あとは方向を定めて適当に下りやすいルートを拾いながら一気に集落跡と見定めた沢に向かって進みました。

黒石集落跡:
集落跡の道に沿って鉄管が埋もれていました
広い沢に下り立つとススキの揺れる集落跡に出ました。石垣で作られた段々の平地には桜の大木がそこここに立ち、庭木が大きくなったような木々がいくつも見られ明らかに周囲の植生とは異なる生活の跡が見て取れます。
石段の脇には腐食した水道栓がなかば埋まってなんとも不思議な光景です。
やがてここも数十年後にはすっかり森の一部となるのかもしれません。集落脇はヌタ場となって鹿の足跡が無数に集まっていました。
そこから林床をびっしりとミヤコザサで被った気持ちよいミズナラの疎林を適当に下っていくとやがて峠越えの道に出ました。

(2007年11月18日)
以前のままの姿をとどめて:
最初に足を踏み入れてから10年、前回からも5年以上経過していますが、まったく変わりなく同じ姿をとどめていました。わずかに植栽の効果も見られはしますが、それにしても一度表土が流れてしまうと緑の復活は遅々とした歩みとなってしまうようです。
でも、裸の山は鉱山や精錬所の地域周辺のみで、尾根を一つ越えれば自然豊かな深い森です。全体から言えば足尾は緑の山という印象を私は持っています。

同じルートをたどったものの下山は当てずっぽうで集落跡に:
今回はベテランの仲間が同行しましたので藪があろうが岩場があろうがどうにかなると思って前回不安だった下山ルートも当てずっぽうで一気に駆け下りました。
ミズナラやヤマザクラの樹林の中で仲間が熊棚を見つけました。(下山後寄り道した備前楯山でもいくつも熊棚
ミヤコザサに埋もれた古井戸
があり、そこに熊が登った形跡の爪痕も見ることができます。) 熊の糞もいくつかあって、もし単独だったらちょっと心細い気がするはずです。
急な沢筋を下るとミヤコザサの平坦地となり、石垣や段々の平地が現れてそこがかつての銅山住宅跡だとわかります。ホーローのヤカンが落ちていました。またミヤコザサになかば埋もれて古井戸が残っていました。いまではすっかり森の中に埋もれてしまいましたがここでどんな生活が営まれていたのでしょう。

美しいミヤコザサとミズナラの森:
住宅跡付近はミズナラの森でミヤコザサが林床を被って美しい景観です。ミヤコザサの背丈が低いのでどこを歩こうと勝手です。ガサゴソと笹の斜面を下っていくとやがて林道に出ました。
 

(2018年9月24日)
なんと山靴の足跡が:
1峰中腹から一枚岩の2峰

10年以上を隔てての久しぶりのこのコースです。
最初に足を踏み入れた20年ほど前は植生作業の痕跡以外は人の入っている気配は全くなくハイカーにとって文字通り未知の領域でしたが、なんと山靴の跡がついていました。
毎度同じコースを歩くのもいいですが今回は尾根歩きを少し延ばして舟石峠付近の1070mの小さな高みまで行ってみました。岩稜が終わって樹林帯をなだらかに下っていって最低鞍部からトラバースしてその高みにつながる尾根に移りますが、この分岐はナビがないと見定めるのがやっかいかもしれません。
1070mの高みは丈の低いミヤコザサとミズナラの林が美しいなだらかな尾根の先にあって、草地と紛うほどのミヤコザサの林床にシートを敷いてのんびり時を過ごしてきました。誰も知らない、誰も来ることもない私たちだけの空間です。

     岩礫帯を行く

      2峰のナイフリッジ
段々畑跡のミズナラ
下山がてらキノコを採って歩いていたらいつの間にか食べきれないほどの量を集めていました。
このルートの左手はかつての黒石集落があった場所で、ミズナラの林もよく見ると段々畑であったことがわかります。かつて銅山に依って暮らす人たちの生活が営まれていた空間も今は森の奥深く埋もれています。
【便利帳】 トイレ:赤倉の古河橋のたもとに公衆トイレ
【寄り道】 赤倉の古河橋や足尾の対岸の水力発電所跡など近代産業遺産があちこちに。
足尾小学校近くの安塚。和菓子屋さんです。お団子をその場で焼いてくれます。餡とみたらしがありますがみたらしの団子をいただきました。焼きたてのおいしいこと。

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