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鋸山 のこぎりやま 1998m

天を突く鋭峰からは大展望

2013年7月20日(こちら)
50年も前のことになりますが、庚申山から鋸11峰を越えて鋸山に達し、さらに皇海山まで一気に登ったことがありました。その後、不動沢からのルートができて皇海山には何度も登る機会がありましたが、そのコースが鋸山と皇海山の鞍部から直接皇海山へ登ってしまうため鋸山へはずっと登ることもなく日が経ってしまいました。
皇海山をピストンしてさらに鋸山も登頂してくるような元気なみなさんもいるようですが、私はそんな気で出かけても皇海山でもうお腹いっぱいな感じになってしまってさらに鋸山までという気にはならず、そんなこんなでずっと登ることもなくこれまで来てしまいました。
そんなわけで今回は皇海山はカットして鋸山だけにして、やっと久しぶりに登ることができました。
かつて登ったときにはなんの困難も感じませんでしたが、さすがに歳とともにバランスが悪くなって急峻な岩場では足下が不安になりけっこう難儀な山の印象がしました。
でも、山深く静かで展望も素晴らしく、思い出深いこの鋸山が昔と変わらぬたたずまいでいてくれてうれしい気分で帰路につくことができました。

2016年10月29日(こちら)
紅葉を狙って再訪しました。またまた大展望を楽しめました。紅葉も稜線は終わっていましたが林道沿いはまずまずでした。
頂上直下は前にも増して危ういルートになっていました。くれぐれも転落事故だけは起こさないようにしたいものです。

重要なお知らせ:R3年3月の沼田市のサイトによる情報です。栗原川林道は追貝側、根利側とも通行できません。従って本ページのルートでの入山は不可能となっています。

関連ページ
皇海山 http://www.kimurass.co.jp/sukaizan.htm


         鋸山頂上 背後は皇海山 

         松木沢源流部を俯瞰
【日程】 2013年7月20日(こちら)
2016年10月29日(こちら)
【山域】 日光
【天候】
【地形図】  1/25000 皇海山
昭文社 山と高原地図 赤城・皇海・筑波

【アクセス】 国道122下田沢から左折して県道62沼田大間々線へ。(沼田方向の案内指示に従う。)
根利で戻るように右折して根利集落に入ったら最初の丁字路を左に曲がり橋を渡ってから直進。
林道に入ると動物侵入阻止のゲートがありますがこれは自分で開いて通過します。しっかり閉じておくことを忘れずに。
あとは道なりに延々と1時間以上かかって皇海橋まで。途中いくつもの林道が分かれますが全てゲートなどで閉じられていますから間違えることもありません。
【駐車地】
皇海橋の手前と橋を渡った先にそれぞれ十数台分の駐車場。
【コース】
皇海橋登山口 - 林道跡 - 不動沢取り付き
- 不動沢下り立ち - 不動沢コル - 1901m峰
- 鋸山 (往復)

約5.5時間(休憩含む) 一般向き(岩場あり)
【メモ】
動物侵入を防ぐゲート
2013-7-20
延々と林道を走る:
根利集落は桐生市と沼田市を結ぶ県道62号線の沼田側最奥の集落です。ここから皇海橋まで栗原川林道を延々と走ります。路面はまずまずですが等高線に沿って作られたような道なのでアップダウンは少ないものの右に左にとカーブが多く気を遣う道です。
根利から程なくしてゲートがしまっていて通行止めかと思いましたが、これは野生動物の通過を防ぐフェンスの道路部分でかんぬきを外して開くことができます。(必ず戻しておかなければなりません。)
林道では早速鹿や猿がお出迎え。ともに10頭ほどの群れでした。根利周辺では高原野菜の栽培が盛んですが、このような状況では野生動物対策がたいへんのようです。
1時間余りも走り、路面が荒れて走りにくく感じるようになるとそろそろ入山点の皇海橋です。
橋の手前と向こう側にそれぞれ十数台は駐車可能な広場があります。また橋の向こう側には立派なトイレがあります。
この林道は逆の追貝側からも入ることができます。かなり前に走ったことがあるだけなので現在の状況についてはよくはわかりませんが、そちらから入ったハイカーに聞いたところどうも根利側からの方が道路状況はいいようです。
いずれの側から入るにしても林道走行がたいへんなのでここまで来れば困難の半分は克服したようなものです。

不動沢
不動沢を登る:
橋の手前から今は使われていない林道が右に登って行きます。まずはこの林道をたどり車止めの前で左に登山道を見たらこれを下ってカラマツ林の中をわずかに進んでから不動沢に下り立ちます。
増水時は徒渉も困難な沢になりますが通常は飛び石で右岸に渡れます。沢を渡った先はしばらくはカラマツ植林地の林床を埋める笹の中の道をたどります。時々樹林の切れ目から皇海山のせり出しの尾根を見上げることができますが、高々と大きな山体を見せていてここからはかなりの登高を強いられそうだと覚悟を決めざるを得ません。
このあたりは位置的にはほんとうに山深いはずですがカラマツの植林地なので山深く分け入っている感じはありません。この一帯はかつて根利山と呼ばれ足尾銅山のための木材を伐採した大規模林業の行われた場所です。ですから奥深くまでその後に造林された植林地となっています。
しかし沢筋の狭い範囲(不動沢左岸)ではありますがブナとシオジの自然林も発達していて植林地を歩いてきた眼には新鮮に映ります。シオジは庚申山荘手前や桐生川源流部などにも群生している林を見ますが、ともに北限に近い分布地のはずです。
沢は1カ所だけ大岩が沢にせり出したプチ難所という程度の箇所がありますが他はおおむね歩きやすく危険箇所もありません。ただひたすら登るだけという沢筋の道です。沢も水流がなくなるとやがて道は沢を離れて最後の急登となります。周囲がコメツガ林になり、さらに行く手が明るくなると突然不動沢のコルに登り着きます。
不動沢のコル
登って来た群馬県側はほぼ植林地でしたからあまり山深さは感じられませんでしたが反対側の栃木県側はコメツガやダケカンバの巨木疎林でいかにも足尾らしい深山の雰囲気です。休憩にはちょうどよいポイントで、一休みして水分とエネルギーを補給しました。
休憩中に早朝に入山したハイカーが早くも皇海山から戻ってきました。
コルからは鋸山を間近に見上げることができます。鋸11峰と呼ばれる鋭峰群はすさまじいほどの登降を繰り返してここに縦走路が刻まれていることが信じられないくらいです。その特異な姿は怪峰と呼ぶに相応しいかもしれません。
ここのコルでお会いしたハイカーはみなさん皇海山に向けて登って行きました。話を聞いてみると百名山狙いのハイカーが多いようです。黒木に包まれた地味な山で展望も優れずとても一般受けのするような山ではありませんから、これほどの人気はひとえに百名山であることが理由でしょうか。
ここからは私だけが鋸山に向けて出発です。 

鋸山を盟主として連なる鋸11峰

深山の雰囲気の登路から肝を冷やす急登へ:
難儀した鋸山の岩場
 

コルから1901m峰にかけてはコメツガが茂りいかにも山深く分け入った気分です。さらに小さなコブを越えるといよいよ鋸山の鋭い山体に取り付きます。見上げるといったいどこをどう登るんだと思うような急峻な鋸山です。
実際見ての通りの登路で、灌木に覆われているものの左右は切れ落ちて万一バランスを崩そうものなら一大事です。
灌木を頼りに急な斜面を登るうちに行く手に大岩が現れます。一応トラロープが下がってはいますがすでに痛んでいてとても体重を掛ける気にはなれません。岩角をつかんで脂肪のせいで無駄に重い体重を引き上げるしかなく、体重と足の短さを嘆くほかありません。
振り返ると爽快な展望が広がってはいるのですがこちらに余裕がなくてとても楽しんでなんかいられません。
あれぇ、こんな難所だったかなぁ、と昔一度通過したはずの記憶をたどってもなんの覚えもなく、ということは当時はたいして難儀には思わなかったということです。やっぱり年齢とともにだんだん難所と感じるレベルが下がって行くようです。
やっとの思いで登り着いた鋸山頂上は大きな山名柱がありすばらしい展望が待っていました。広い展望に加え、足下がスパッと切れ落ちてまるで天空にいるような場所です。


       振り返れば皇海山


    奥:太郎山、小真名子山、大真名子山、女峰山、男体山
    手前:シゲト山、黒檜山、大平山

     巻機山
       

鋸山の大展望:

東側と南側は雲が阻んでいましたが西と北の方角には素晴らしい展望が広がっていました。なんと言っても眼前の皇海山の大きさには目を見張ります。その右には白根山から太郎山、小真名子山、大真名子山、女峰山、男体山と続く日光の山々、その手前に中禅寺湖南岸の山々が続きます。
一方、皇海山の左にはなんと未だに雪を残す巻機山が見えました。そしていくつものピークを連ねる大きな根張りの武尊山が雄大です。
さらに左には谷川岳周辺の山々や苗場山の特徴ある平頂、草津の山々や四阿山などを眺め、浅間山を見てその左は残念ながら雲に隠れていました。
すでに登った山、まだ登れていない山、それぞれ思い出したりいつかはと思ったり、こうして広闊な展望を前にして山々に思いを巡らすのもこんな眺めの優れた山でこその楽しみです。
        浅間山        武尊山
槍ヶ岳・穂高岳
 
目を凝らすと四阿山と浅間山の間にはなんと槍ヶ岳や穂高岳も遠望できました。遠距離ながら槍の穂先も穂高の高みもくっきりと見えました。
ちょうどいい案配に四阿山と浅間山の間には高い山がなくその位置に槍・穂高がでんと構えています。
いつまでも見飽きない大展望ですが、下りの岩場が気がかりでそうそういつまで腰を落ち着けてもいられません。 
登り以上に気を遣いながらやっとコルまで戻り、あとは不動沢を登っただけ下る道理に従ってひたすら下りました。

2016-10-29
不動沢・カラマツの落ち葉がびっしり
 

荒れた林道:
沼田市のサイトに「栗原川林道の状況について(平成28年10月11日)」のページが載って、それによれば豪雨の被害で通行止めだった根利側、追貝側とも開通したとのことで、それっとばかりに鋸山を計画しました。
林道はいつものように根利側から入りましたが、それはこれまでの経験で栗原川に沿った険しい地形の追貝側より平坦地形の多い根利側の方が比較的路面が荒れていないで走りやすかったからです。ところが今回の豪雨被害からの復旧は追貝側が優先だったらしく根利側からの道はかなり荒れたままでした。(そのために帰路は追貝側に下りましたが根利側に比べてかなり走りやすかったです。)
延々と走ってうんざりする頃にやっと登山口の不動橋が見えて、すでに先客の車が数台停まっていました。百名山の威力まざまざでなんと大阪ナンバーがありました。
トイレに入山届けやパンフレットなどがありますのでここで支度を調えていよいよ入山です。

かなり手強い鋸山登路:
緊張の岩場

いつもの慣れ親しんでいる不動沢のコースですからペース配分も順調に不動沢のコルへ。とはいえコル手前の急登はなかなかきつくてやはり立ち止まって息を整えさせられます。
コルは強風が吹き抜けて寒くてたまらず足尾側に一段下がった草地で一息入れました。
見上げると鋭く天を突く鋸山が逆光で黒々として聳えています。いつもながらいったいどこをどう登るのかといぶかしく思うほどの急峻さです。
コルを行き交う登山者はほぼ皇海山を目指します。この日、鋸山ルートで会ったのは下山してきたソロの登山者と途中で引き返した2人の登山者のみでした。それだけにコルから先は深山の雰囲気が濃くいよいよ足尾の奥深く入り込んだと言う感が強く気持ちも引き締まります。
しばらく平坦尾根の登降が続いたところでいきなりの急登になります。まずは岩の難所、落ちたらただでは済まない急峻さです。固定ロープもありますがかなり風雨にさらされていてとても体重(=命)をかける気にはなれません。指先を岩角に引っかけて登るしかありません。岩の難所を登りきると今度は滑りやすい泥の急登になります。却って岩より厄介です。
肝を冷やしながらなんとか頂上へたどり着いたときには緊張でヘトヘト、その大展望に快哉の声を上げるには一呼吸おいて気持ちを落ち着ける時間が必要でした。

鋸山の大展望:
今回もまた素晴らしい展望が待っていました。前回と逆に西の展望は少々残念でしたが東側の日光、足尾の壮絶な景観はここならではのものです。なんといっても松木沢を取り巻く山々の雄大さ。大平山、社山、庚申山などが遠望するときの優しい姿とはまるで違って壮絶な薙を落とす荒々しい一面を見せています。

     庚申山 

     袈裟丸山群 
頂上からの南側の展望は樹林に阻まれていますが、頂上から六林班方面にわずかに降ると前方が開けた草地に出ます。ここからは南に袈裟丸山群が一望です。

 松木沢源流部を取り巻く山々 三俣山 シゲト山 黒檜岳 大平山 
 遠景は日光の太郎山、小真名子、大真名子、女峰山、男体山、近景中央は国境平にせり上がるモミジ尾根
、  

帰路は追貝へ:
地元ナンバーのハイカーに伺ったところ追貝側の林道の方が多少とも走りやすいかな、とのことでそちらに下ることにしました。
確かに根利側に比べ走りやすく感じました。
途中の紅葉が見事でした。
【便利帳】
トイレ
 
トイレ:皇海橋脇(根利から入ると橋の先)の道から一段高くなったところ。
コンビニ:大間々市街。下田沢手前にあるコンビニは早朝営業していません。
【寄り道】 林業機械化センター(根利):昔の森林鉄道の機関車が修復展示されています。(アクセス概念図参照)
しゃくなげの湯(日影南郷):日帰り温泉 沼田方向へ8kmほど
【収穫】(^_^;  2013-7-20 53片 50g
2016-10-29 16片 30g
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