目次
赤城・つつじが峰 小峰通り つつじがみね こみねどおり 1466m(茶ノ木畑峠)

なるほどその名の通りのつつじのトンネル

前年秋、横引き尾根〜銚子の伽藍〜血の池と周回した折に横引き尾根のシロヤシオ群を見て花期に再訪しようと決めていました。
同じコースというのも面白みがないので南麓の大猿公園からつつじが峰を登ってみました。噂に聞くつつじのトンネル、なるほどつつじが峰の名称に納得です。
つつじが峰にはミツバツツジが多いのですが、すでに満開時期は過ぎてヤマツツジの盛りとなっていました。緑のシャワーの中、盛り上がるように咲く深紅の花叢は見事でした。
また横引き尾根のシロヤシオもちょうど満開になったばかりで、まさに清楚という言葉がぴったりの無垢な花びらを揺らしていました。
下山にとった小峰通りは樹林の美しい尾根で、かつての赤城神社参拝道の跡と思われる古道跡が残っています。


         ヤマツツジ(つつじが峰)
        ミツバツツジ(つつじが峰)

         シロヤシオ(横引き尾根)
           つつじのトンネル(つつじが峰)
【日程】 2011年6月5日
【山域】 足尾
【天候】 曇り
【地図】 1/25000赤城山

【アクセス】 赤城南面道路(県道353)は前橋方面からなら赤城山方面に登って畜産試験場右折、桐生方面からなら大間々市街から西進。
前橋方面からは三夜沢で左折して南面道路のもう一つ上の道路(広域農道)で右折(右折した先の左側に電力中央研究所があります。)、桐生方面からなら梨木温泉、桐生カントリークラブ案内に従って右折後4、500m先で左折。
からっ風街道あるいはおおさる山之家の案内を見つけたら北に折れて別荘地を過ぎるとやがて大猿公園。
【駐車地】
 
公園前に大きな駐車場が2カ所。
【コース】
大猿公園
−つつじが峰− さねすり岩
− 横引き尾根出会 − 銚子の伽藍展望台
−茶ノ木畑峠 −追分 − 雨やどり岩
−大猿公園


実行程約4.5時間 一般向き
【メモ】
大猿公園
大猿公園:
大猿公園は大猿生活環境保全林として整備された一角で、バーベキュー施設やおおさる山之家(研修施設)などがあり家族で訪れるには恰好のエリアのようです。
駐車場前には澳比古神社の赤い鳥居があり、鳥居脇には湧水があって水をくみに訪れる人も多いと言うことです。
つつじが峰コースはこの鳥居脇からスタートします。
車道をたどるとトイレ、バーベキュー施設、おおさる山ノ家を過ぎ右手に澳比古神社を見て車道から山道に分かれます。
澳比古神社は男根石・女陰石をまつった神社だと言うことです。ひょうきんな大猿の石像がありますがこれは近年造られたものです。
山道は階段が続きいきなり大汗を絞られます。20分ほどの苦行で尾根に出て大滝側からの登山道と合流します。合流点に石碑がありますが、彫られた文字などは読めません。
いよいよここからつつじが峰の長い尾根の登りが始まります。
ツツジに包まれたつつじが峰登路:
緑のシャワーを浴びて登る
 

最初のうちこそなだらかな登りですが標高1100mあたりから急登が続きます。しかしつらいだけの登りではありません。緑のシャワーを浴びるような樹林が心地よく、その緑の中にヤマツツジの鮮やかな深紅の花叢が浮かび上がっているのに会うと思わず足を止めて眺め入ってしまいます。ここのヤマツツジは低山のそれに比べ色が鮮やかな気がします。
所々で薙状に激しく崩壊している沢の源頭に出くわしますが、火山性の脆弱な土壌が影響しているのかも知れません。
その崩壊地の縁から見下ろすと赤城山がいかに大きく山深いかを実感できます。
急登はいっこうに緩むことなく最後まで続きます。標高約1300mほどでさねすり岩が現れます。大岩の隙間をすり抜ける様に登路が造られていて、そのことからこんなちょっと卑猥な呼称になったようです。傍らに蜀山人の歌碑がありますが、その狂歌も卑猥なこの岩の名前から連想したようなもので、それを彫って運んでくるその酔狂さに脱帽です。
いつしかヤマツツジからミツバツツジにバトンタッチしてさながらつつじのトンネルです。 さねすり岩付近ではまだヤマツツジは開花していずほとんどがミツバツツジです。(このあたりのミツバツツジは分布域から考えるとトウゴクミツバツツジのようです。)
これまではヤマツツジが咲き誇っていましたが、実際には花期が終わってしまったミツバツツジの方が断然多く、散った花びらで花の絨毯になっていました。ミツバツツジの満開時にはどんなにか艶やかだったでしょう。
途中崩落地の縁では展望が開け、行く手の横引き尾根や銚子の伽藍などを見通せます。わずかながら銚子の伽藍の最後の滝も見ることができます。
やっと急登が緩むと赤城外輪山の南縁にあたる横引き尾根の一角です。

シロヤシオの巨木
 
シロヤシオの巨木:
銚子の伽藍展望台まで足を延ばすことにしました。前年そのあたりにシロヤシオの巨木がたくさんあったのを見ていたからです。
尾根を西に向けゆるやかに下降していきます。北斜面にたくさんのシロヤシオがあって、ちょうど満開になったばかりで純白の花が惜しげもなく咲き乱れていました。幹の直径が30cmほどもある巨木もあり、樹齢がどのくらいなものか見当もつきません。
開いたばかりの花は文字通り純白で、春一番のアカヤシオが艶やか、華やかなのに比べ春の最後を飾るこのシロヤシオは清楚、無垢な美しさです。つくづくきれいな白。
純林と言えるほどの群落を形づくることもなく樹林の中に控えめに咲く姿もいいですね。
銚子の伽藍へ下る分岐を見送ってわずかに上ると親子亀。見ようによっては親子の亀に見えなくもない岩があります。足下は崩壊しかかった断崖で天候がよければ関東平野の大展望が得られます。本日はあいにくの曇り空で眼下の粕川の谷の深さを見降ろすのみでした。
さらに危なっかしい断崖の縁を進むと銚子の伽藍展望台。ここも断崖上で広い展望が待っています。ただし銚子の伽藍展望台とは言ってもその全貌を見られるわけではなく谷を俯瞰するだけです。銚子の伽藍はこの先の沢に降りて落ち口を見ることはできますが、それすら落ち口を覗くだけで、その全貌はといえばやはりエキスパートのみが沢登りの末に見ることのできる秘められた場所のようです。
つつじが峰合流点まで登り返しいそのまま横引き尾根を東進します。シロヤシオ、ミツバツツジが続きます。左手のおとぎの森の周縁の斜面にはミズナラの森が広がってこの景観もなかなか見事です。
このあたりにはレンゲツツジも見られますがまだまだ開花には時間がかかりそうでした。
清楚なシロヤシオの花
 
小広い峠に立つとそこが茶ノ木畑峠です。
このあたりに繁茂するコメツツジの樹形を茶の木に見立てて茶ノ木畑と呼んだという話があります。
左に下るとおとぎの森をかすめて小沼方面へ、右にはこれから下る小峰通りへ、そして直進する踏み跡は外輪山縦走を目指していますがこれをたどってもコメつつじの藪に阻まれます。
かつて長七郎山との鞍部から突破してたどった経験がありますが足跡を残したい向きにはその価値はあるかも知れませんが藪がひどくて労力ほどの面白みはありませんでした。

小峰通り:
小峰通りのミズナラ巨木
茶ノ木畑峠からなだらかな下り道で小峰通りをたどります。樹林のきれいななだらかな尾根で、相変わらずミツバツツジ、ヤマツツジが咲き誇っています。花の密度はつつじが峰に比して少しもの足りませんがその分は樹林の美しさで取り返した気分です。とりわけミズナラの巨木が見事です。おとぎの森が尾根を越えてそのまま続いているような感じがします。ミヤコザサの林床もきれいで、沢筋を透かして覗くと沢の源頭らしき景観がまた印象的です。熊のつけたらしい二筋の足跡が沢を横切っていました。親子熊だったのでしょうか。
途中、追分とあまやどり岩で左へしっかりした道を分けますが、私たちの戻る大猿方向へはいずれも右へ下ります。その分岐の先の道は今はあまり歩かれてはいないようですがしっかりした道でおそらく参拝道の名残かと思われます。その理由として、この先山道と平行したり交差したりしながらずっと古い道を認めることができ、たぶん先ほどの道もこれと同じような古道跡なのではないかと推察できます。
この古道跡と思われる道は徹底して小ピークを巻いて決して登降することなく総体的な傾斜に従って下っています。ほんのわずかなピークさえ巻き道となっています。これは参拝道の特徴です。
かつて赤城山の裾に点在する各村から幾筋もの参拝道が赤城神社目指して集中していたことを想像するのも楽しいですね。(前年、赤城北面を歩いたときにも沼田方面から登ってくる参拝古道に出くわしました。)
ミズキの花
 
参拝道跡はさらに尾根通しに下っていますが、登山道は尾根からはずれジグザグを切って大猿公園に下山します。階段の歩きにくい道ですがすぐに公園の子供の歓声が聞こえるようになると車道に飛び出します。
駐車地までは4、5分ほどです。
大猿川周辺はちょうどミズキが満開で、普段は全く気にもとまりませんが、これほどミズキがあるものかとびっくりです。
高木で斜面に生育しているため花を近くで見ることはあまりありませんが、たまたま駐車場近くに小さなミズキがあったので観察することができました。葉は街路樹で馴染んでいるアメリカハナミズキそっくりで、花はやはり花弁が4片でアメリカハナミズキに似ています。ただし大きさはほぼ1/100の数ミリくらいで、これが集合花となってアメリカハナミズキとは似ても似つかない花に見えると言うわけです。
それにしてもこのあたりのミズキの多さは特筆に値し、みごとなものです。
周回コース一周のうち横引き尾根では小沼方面から来たらしいハイカーに会いましたが、つつじが峰を登ったハイカーは私たちの他には2組4人だけだったようです。じつに静かな尾根でした。
赤城山の外輪山内側は人気の初心者コースとして賑わっていますが、ひとたび外輪山の外側を歩いてみると人に会うことも少なくその山深さと大きさを実感します。実際、赤城山北面、東面は今もほとんど人の入らない尾根と谷が広がっています。
【便利帳】 トイレ:大猿公園
【謝謝】 参考ガイドブック 新分県登山ガイド・群馬県の山 山と溪谷社
【収穫】(^_^;  11片 20g(つつじが峰と小峰通りではほとんどゴミなしでした。)