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  雪倉岳 朝日岳  ゆきくらだけ 2611m 朝日岳 2418m

北アルプス最北の峰は圧倒されんばかりの花、花、花
 
(1999-7-31)
念願の雪倉・朝日は想像していた以上の花の山でした。雪田の周囲を包む花々の多さといったら。空の青、雪の白を背景に色とりどりの花々、花好きのハイカーにはたまりません。
これ以上はないというほどの快晴のもと、山名盤に記された範囲を越えて遙か関東の山々まで見通せる大展望でした。また富山湾の向こうに横たわる能登半島や日本海に浮かぶ佐渡が印象的でした。
(2007-8-6)
8年を経ての再訪です。またも天候に恵まれ、雄大な景観とたくさんの高山植物を楽しんできました。
朝日小屋は評判通りのじつに心地よい小屋でした。このコースの山旅の楽しみの一つでもあります。

                    五輪尾根

     五輪尾根より白馬岳

      五輪尾根上部から朝日岳を見上げる
【日程】 1999年7月29〜31日
2007年8月4〜6日
【山域】 北アルプス
【天候】 29日曇り 30,31日快晴
4日雨 5日晴、6日快晴

【アクセス】 長野ICから白馬長野有料道経由で白馬村、さらに国道148を新潟県側の平岩まで。平岩から蓮華温泉まで狭い山道。
【駐車地】 蓮華温泉前に駐車場
【コース】 1日目:蓮華温泉 - 白馬大池白馬大池山荘(実行程3.5時間)
2日目:白馬大池− 小蓮華岳− 三国境− 雪倉岳− 朝日平朝日小屋(実行程10時間)
3日目:朝日平 - 朝日岳 - 五輪尾根 - 蓮華温泉(実行程9時間)
健脚向き
【メモ】 白馬大池の周辺はハクサンコザクラ群落:
蓮華温泉
蓮華温泉は湯治場風でもあり山小屋風でもあり、露天風呂を楽しむためにだけ訪れても充分満足できそうです。
蓮華温泉からはいきなり樹林の急登、なかなかつらいスタートです。途中、天狗の庭と呼ばれる露岩帯で高山植物と展望を得られますが、あとはひたすら白馬大池の花を思い浮かべて頑張るのみです。まあ、こんなコースでも森の花がなぐさめてくれるのは普段から花好きで花をいとおしんでいることへのご褒美です。
時たまポツポツ落ちて来てはいましたが天狗の庭あたりからいよいよ本降り。体調を崩して病み上がりであったせいかこの雨が疲労感を一気に膨らませて足が痙攣する始末で、3時間ほどの登りなのにめまいはするし熱は出るし咳き込むし、すっかり疲れ果ててしまいました。
樹林の道の傾斜が緩んでくると突然白馬大池に飛び出します。大きな雪田とお花畑、このいきなりの開放感は劇的です。チングルマ、ハクサンイチゲ、ハクサンコザクラの混生するお花畑の中を通って大池山荘まではほんの2,3分です。

展望と花の散歩道:
雪倉岳より三国境、白馬岳、旭岳と来し方の稜線を望む
大池から小蓮華までは乾性お花畑を楽しみながらの緩い登りです。徐々に高度を上げるに従い右に雪倉方面のたおやかな稜線が雲の切れ間からときどき顔を覗かせます。8年前に登ったときには左に後立山方面の豪快な稜線を見上げ、さらに西方向に180度に広がる雨飾・妙高・戸隠、遠く苗場・平標、四阿・浅間、八ヶ岳、富士山、南アルプス、中央アルプス、さらに遠く遠く日光白根らしき特徴ある高みさえ見えました。なんという広がりでしょう。
今回はそこまでの遠望は利きませんが、雲が上がった瞬間に姿を現す北アルプス最北の峰々の姿もまた感動的でした。
小蓮華山は頂上が崩落していて立ち入り禁止となっています。三角点の地点が数m凹んでしまい、いずれ再測量して設置し直すとのことです。白馬や後立山の好展望台だっただけに早くまた登れるようになってほしいですね。
小蓮華から三国境までも楽しい散歩道です。途中コバイケイソウの咲く舟窪(二重山稜)を過ぎるといよいよ核心の雪倉への分岐・三国境(さんごくさかい)です。三国境には白馬岳からの下山のハイカーで溢れていましたが、雪倉方面にコースを取る人は少なく、急に静かな稜線散歩となりました。
今や盛りのコマクサや咲き残りのウルップソウなど乾性の花が登山道ぎりぎりまで咲いていて踏まないようにコースをはずさず慎重に歩かなければなりません。左前方に見える長池とその周囲の景観には心和みます。しかし、遙か先に朝日岳、さらにその先の今日の終着点朝日小屋を見るとあそこまで行かなきゃならんのかとちょっとぞっとする景色でもあります。(^_^;
三国境の混雑から逃れたあたりの風の弱い場所で朝食にしました。見上げる小蓮華の尾根には白馬から大池へ下山するハイカーの列が米粒のように並んで見えます。

憧れの雪倉山頂:
雪倉岳頂上
個人的な感傷ですが、雪倉岳は以前Nifty山のフォーラムで知り合った故わかたさんにぜひぜひと薦められた約束の山で、こんな素晴らしい山を身近に感じることができるのも元はといえば彼のおかげです。
三国境からコマクサ、ウルップソウの咲く斜面を大下りしていよいよ高山植物の宝庫・鉢ヶ岳の巻き道です。この巻き道はほぼ水平で乾性、湿性のお花畑が入れ替わり立ち替わり次々と現れる楽しい道です。
雪倉岳避難小屋を左に見るといよいよ雪倉岳の登りです。見上げた感じではかなりハードな登りに思えますが実際は次々と顔を見せる花たちや振り返る白馬方面の大景観に歓声をあげているうちにひょっこり頂上に達してしまいます。
もちろん展望は雄大です。ここまでたどってきた小蓮華、三国境、鉢ヶ岳の稜線、白馬岳から旭岳、清水岳(しょうずだけ)と続くひときわ高く連なる尾根、これからたどる朝日岳までの稜線、さらに富山平野や黒部川も視界にとらえることができます。

花は続く:
雪倉からは、一旦、大下り。とにかく下ります。ほぼ500m、なんともったいない。
でも花はいよいよあふれ返るくらいに咲き乱れて、けっして苦しいだけの山道ではありません。それどころかあれこれ初めての花にもいくつか逢えてこんなうれしい道はありません。とにかく花*花*花、花だらけです。
あらかじめ朝日小屋に問い合わせてうかがったところ、今年は梅雨明けが遅れたためかなかなか開花せず、これで晴れれば一気に満開です、とのこと。まさにその通り、ウルップソウからタカネマツムシソウまで通常ならほぼ1ヶ月近くずれるこれらの花が同時に見られるという幸運。まさに百花繚乱、花が目的の私たちは歓声を上げっぱなしでした。

赤男山捲き道と朝日岳の水平道には参った いったいどこが水平なんだ:
雪倉岳の大下りの最低鞍部は気持ちのよい水場で、やはりここも花であふれています。
ここからは樹林帯にいよいよ突っ込んでいきます。花はあいかわらず咲き乱れてはいますが、捲き道とは名ばかり、登ったり下ったりなかなか消耗させられます。まず赤男山(あかおとこやま)巻き道。樹林の中の細かい登降を繰り返します。途中のツバメ平は今にも崩落しそうな岩場の真下を通過するガレ場で、思わず足が早まってしまいました。
この道はいくつかの湿地帯を繋いで、湿性植物の宝庫と言っていいと思います。が、疲れの出てきた足にはなかなかつらい登降の繰り返しで、朝日岳の水平道(白馬水平道)に入るとこの傾向はさらに厳しく、だんだん花どころではなくなってしまいました。赤男山巻き道のスタート点と朝日平の最終点の標高がほぼ同じくらいというだけで決して水平じゃないよな、とぼやくことしきりでした。
とはいえ、ミズバショウやハクサンコザクラ、そしてキヌガサソウの道と呼びたくなるくらいたくさんの大きな白い星、さらには瑞々しいサンカヨウの群落という具合に湿原の花、森の花があふれてつらい一歩も考えようでは長く楽しめるじゃないか、とヤケクソ気味。

朝日小屋は聞いていたとおりの気持ちよい小屋でした:
グロッギー気味でたどり着いた小屋でまずは祝杯。大満足の一日の行程を思い返しながら飲むビールのおいしいこと。
今日一日抜きつ抜かれつしてきた(じつは抜かれっぱなし)みなさんと山小屋前のベンチでゆったりとおしゃべりしながら過ごしました。みなさん一様にこのロングコースの難儀と素晴らしさを反芻しているようでした。
朝日小屋はとても気持ちのよい応対と美味しい食事が魅力の人気の山小屋です。

下山もまた天国と地獄:
ハクサンコザクラ群落

朝日岳頂上より劔岳、立山、大日岳、遠く赤牛岳、水晶岳まで遠望
翌朝は小屋の朝食をいただいてから、まずは朝日岳頂上へ。前日にまさる快晴。立山、別山、剣、大日、毛勝三山が間近です。前回の時は遠く白山までの遠望、富山や黒部の町はもちろん富山湾から能登、佐渡まで手に取るようでしたが、今回はそこまでの展望はありません。ですが、山頂の山名盤にある山々のほとんどは展望できました。
さて、いよいよ下山。まずはシロウマアサツキの咲く北尾根をたどり、親不知への栂海(つがみ)新道を目指すグループに別れを告げて見送ってから、大きな雪田の広がる斜面を通過してこのあたりが白高地、まことに気分の良い湿地帯の平地です。湿性お花畑の連続です。とりわけハクサンコザクラの群落は圧巻で一面ピンクに染めています。雪田、お花畑、小さな流れ、この付近の景観は今回のコースの白眉とも言える美しさです。見上げれば空の青をバックに朝日岳が高々と聳えいまさらながらこの山の根張りの大きさに驚かされます。

朝日岳下山(栂海新道分岐、白高地を見下ろす)
ここから五輪の森と呼ばれるオオシラビソとダケカンバの樹林帯を通過して、また広々した草原となるこの辺りのなだらかな尾根が五輪尾根です。尾根全体がなだらかな湿原で、延々と木道が続きます。見上げる雪倉岳、朝日岳が雄大にそして優しく横たわっています。ああ、あそこを歩いてきたんだなと思うとなんだか偉くなったみたいな気分。この快適な道は花園三角点まで続きます。ここまでは本当はもっともっとゆったり楽しみたいところですが、ここから先の難儀な道を思うと気が急いてそうそうのんびりもできません。
花園三角点からほどなくでいよいよ樹林の下り。余力を残して最後の登りに備えなければと思うのですが、すでに足は嫌がっています。
カモシカ坂の急下降をこなしてまずは白高地沢の仮橋、鉄パイプを組み立てた仮橋で1人づつと注意書きがあります。私たちの後から来た急造らしい団体は先が詰まってるのにぞろぞろ渡って橋の上で行列、危ないってば。(^_^;
ここでお弁当を広げましたが、朝日小屋の弁当のおいしいこと。
さらに登り返しての急下降で瀬戸川鉄橋、このあたりですでに戦意喪失気味となりました。いつも、本来登っただけは下るものと観念して下山の苦しみを受け入れていますが、この山は登っただけどころかさらに下って登り返すという理不尽なコースではないかとぼやきぼやき、まあ、足さえ出していればいずれたどり着くだろうよと、もはや無条件降伏状態。
やがてシモツケソウとオオバギボウシの咲き乱れる兵馬の平の湿原を経て緩い登りの末やっとこさキャンプ場へたどり着きました。でもここから蓮華温泉までの林道さえ青息吐息、見上げる五輪尾根が恨めしかったこと。

温泉に浸かって極楽極楽:
蓮華温泉はまさに名湯です。やや白濁していて舐めると塩辛い味がします。
日焼けに滲みる湯の熱さをこらえながら手足を伸ばすと、極楽極楽。
白高地付近から 小蓮華山、雪倉岳、赤男山


【便利帳】 トイレ:蓮華温泉駐車場、白馬大池山荘、雪倉岳避難小屋、朝日小屋