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  超低山巡り(番外編)

栃木県で一番低い山はどこだ
先日、Yahoo掲示板(栃木百名山)で栃木県で一番高い山が話題になりました。もちろん日光白根山ですが、この白根山、栃木県の山と思われがちですが県境にあって、栃木県で一番高い山であると同時に群馬県でも一番高い山です。これより北に白根山より高い山はありません。
ちなみに燧ヶ岳は群馬県の山と勘違いしがちですが山裾までしっかり福島県で、福島県の最高峰と同時に東北一の標高を誇っています。
では、栃木県で一番低い山はどこ? 気になりだしたら収まりません。地形図を見ながら探しましたが、平地の標高を調べてみると意外に県東部ははずせることが判り、1/25000で佐野、下野藤岡のどこかだということになりました。
【日程】 2007年2月3日
2012年12月24日追加はこちら

     三杉川から願成寺山 一番低い山は、これだ! たぶん(^_^;

【メモ】 そもそも「山」って?
ハイカーにとっての山。そもそも「山」って?
栃木県南部は古墳が多く、また平地林もたくさんあって、それらを「山」と呼んでいることも多いですので、まずこれらは除外することにしました。
そのほかも勘案してこんな条件をつけてみました。

1.ただの三角点とか標高点じゃなく、「山」として周囲より盛り上がっている。せめて等高線1,2本はほしい。
2.古墳や塚は山ではない。(自然の山を利用しているならば「山」)
3.ある山の付録みたいな麓のコブははずす。
4.できれば***山などと山名がある。
5.樹木はぜひとも生育していてほしい。
という条件で探してみました。

地べたの標高を考えると当然県南です。二宮、小山、野木、藤岡、大平、岩船、佐野あたりに絞られるかなと思って地形図を見てみると
地域 山名等 標高 可否 理由
足利 岩井山 59m 標高点 渡良瀬川の中州
毛野中学校裏山 45m 等高線   × コブ
岡崎山 51.6m三角点 寺岡元三大師
藤本八幡山 30m 等高線   × 古墳
小曽根観音山 27m 等高線   × 古墳
稲岡(古墳?) 33m等高線 田圃の真ん中 古墳?
佐野 城山 55.8m三角点 山城
観音山 44m 標高点 観音山公園
伊勢山 39m 等高線 伊勢山神社 × 標高差6m
茂呂山 24m 等高線 国道50号脇 × 標高差微少
岩舟 三毳山北隣 55m 標高点 旧国道脇
静立体交差南西 40m 等高線  
文化会館南 40m 等高線 国道隔てた南側
両毛線際 40m 等高線 謎の土塁記号
和泉日立 40m 等高線 謎の土塁記号 (未踏査)
藤岡 インター南西 29.3m三角点 三杉川
藤岡北半丘陵地 25m〜30m  
蛭沼(古墳?) 24.0m三角点 田圃の真ん中
小山 小山城跡 40.1m三角点   × 標高差4.5m

低山があるかなと予想した二宮、小山は意外に平地標高が高く、また足利、佐野も平地がほぼ20mあってこれに等高線に現れる標高差を考えるとほぼ除外対象です。
これを比較してみると藤岡町の山から調べていけば効率的です。

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足利で一番低い山は?
まずは地元の一番低い山として狙いを付けた(というより、古墳を外すとここでキマリなんですが)岡崎山の探索。
その前に前々から気になっていた富田(稲岡町)の田圃の真ん中のモッコリに登ってみました。
稲岡・謎のモッコリ
大小山を背景にした写真を一枚パチリ。(大小の字が見えます。)
小さな石祠がありツバキが満開でいい雰囲気です。
どう見ても古墳ですが説明板もなければ名称を記した杭一本ないので判らずじまいでした。(帰ってネットで調べたらやはり古墳でした。?は解決。)
岡崎山 51.6m:
岡崎山は寺岡元三大師で有名です。
北側には岡崎山古墳の標識があり、また例幣使街道の説明板もあり、この山麓の路が例幣使街道であったことが記されています。
古墳の標識脇からしっかりした登山道がついています。
頂上には昭和天皇が陸軍演習をご覧になった折の御野立所の石標がデンと立っていました。
その脇に申し訳なさそうな三角点。歴とした三角点峰です。
鳥見の人が写真を撮っていましたが、思いの外、人が登っているようです。
路はそのまま進むと元三大師の本堂脇に下りつきます。
山裾を笹が埋めていますが、この辺では見かけないクマザサです。植栽したものが増えたのでしょうか。
写真は頂上、三角点、岡崎山全景
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狙うは三杉川沿いの低い山:
効率よくチェックするには低い標高から狙いを。
佐野のアウトレットの南西、三杉川のほとりになんと29.3m三角点がありました。

頂上は藪の中:
かつての越名沼は干拓されて三杉川となっています。その南の縁に、これは間違いなく「山」がモッコリ。
願成寺橋と銘のある橋を渡ると山裾が墓地となっています。
どうやら藪を突かないと頂上には立てません。荒れ放題の藪をかき分けて最高点に。西側には露岩もあり、これは立派に「山」です。
なんと古びた社のような小屋掛けがありました。中に自然の岩が一つどんと置いてありました。ご神体なのでしょうか。

下野郡三鴨村大字都賀:
さらにあたりをウロウロしてみると落ち葉に埋もれた古い踏み跡がありました。辿ってみると笹にすっかり埋もれてやや倒れかけた大きな石碑があり、どうやら線彫りの仏像でした。野州下野郡三鴨村大字都賀の文字が読めます。
三毳山の三毳ではなく三鴨というのは興味深いですが、理由や経緯は判りません。また、都賀が都賀郡総称の都賀と何か関係があるのか、ひょっとして都賀郡の代表選手なのか興味が湧きます。

三角点はどこだ:
当然三角点にタッチしなくては。
必死で探したものの結局見つかりません。最高点とは限りませんので一段低いあたりも探しました。しかし、それらしい痕跡すらなく、やむなく踏み跡をたどって墓地の奥に降りました。(諦めきれず、帰りにもう一度登って探しましたが、とうとう会えませんでした。)
お墓参りの人とお話しして聞いたところ、この山は「願成寺」と呼ばれているそうです。かつて願成寺というお寺があったのですが火事で焼失し結局再建成らなかったそうです。
サイトを巡って見るとここは城跡(小南城)でもあるようで、山名は「願成寺山」のようです。なるほど城跡らしく山体は何段かの平坦地の積み重ねとなっていて土塁の跡を見て取れます。

藤岡町は丘陵地なのでまだ安心できない:
願成寺山の墓地から眺めてみただけでもあたりは屋敷林とも丘ともつかない森がたくさんあります。藤岡町の渡良瀬川北側は低湿地と高台がまだら模様になって、低地は水田に、高台は人家、畑、平地林となっています。
めぼしいものをチェックしようと縦横に走り回りましたが、屋敷林、平地林、鎮守の森などで、左写真のような山らしい景観の林も反対側に回り込むとそこは高台の平地で人家や畑だったりしています。
結局「山」といえるような高みは見つかりませんでしたし、地形図上でも見あたりません。
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気になる蛭沼のモッコリ:
藤岡町の蛭沼、部屋、小山市の寒川あたりはおそらく栃木県でもっとも低地です。水害対策に人家が盛り土の上に建っているのをよく見かけますし、また神社なども盛り土の上に建っています。(ひょっとするとこれらの盛り土は古墳の跡なのかもしれません。蛭沼には古墳が多く蛭沼古墳群と呼ばれています。)
蛭沼の三叉路西に人家の中に山みたいな盛り土があると聞いていたので通ってみましたが、なるほど敷地内にどでんと小山が。へぇーと思わず停車して眺めてしまいました。古墳を屋敷に取り込んだのか水害対策なのか判りませんが、しかしこれは山とは言えませんからとりあえずはずします。
ですから、この低地一帯は真っ平らと言っていいようです。


山王寺大桝塚古墳:

しかし、地形図で三角点のあるモッコリが気になります。それは古墳でした。田圃の真ん中に前方後方墳が。
昔は低湿地か沼地だったに違いありませんが、どこからこれだけの土を運んできたのでしょう。
説明板によると「山王寺大桝塚古墳」と言うのだそうです。しかし、なんと古墳の上に三角点。人工物の上にも三角点を置くんですね。随分横着といえば横着。(^_^;
バチ当たりですが、一応頂上を踏まないと。
頂上に三角点があり、石仏が倒れていました。また、タヌキかと思える巣穴がいくつもボコボコありました。
なかなか展望の良い古墳でした。(ごめんなさい。)
この古墳は珍しい前方後方墳ですが、前方の大方と後方の一部は土がなく、昔、誰かが失敬して自分の家の土台にでもしちゃったのかと可笑しくなりました。(ネットで調べると畦土にするために盗まれたという記述もあります。)

頂上から見るとすぐ北にも小さな古墳があります。

さらに北に同じくらいの小山が。お、あれも古墳か。
行ってみると、なんと残土の捨て場。(^_^;
バカやろーっ!
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一応目をつけたので岩舟のモッコリも:
標高から考えてこれでキマリなのですが岩舟の謎のモッコリもチェックしてみることにしました。
岩船の立体交差の南西に低山があります。

岩舟の低山:
岩舟の立体交差の南西に低山があります。(写真中央、右端に立体交差脇の電波塔の山))
押しも押されもせぬ立派な低山ですが、麓の標高がちょっとあるので残念です。
そしてその北西、文化会館南の地形図で気になった神社はただ神社のある林で、ほんのわずかな標高の差がたまたま等高線に引っかかっただけで、実際は平地同然でした。

小山公園:
さらに両毛線際に謎の土塁記号があります。かなり気になる存在です。
行ってみると、露岩もあるし頂上付近に神社(三峰神社)もあるしこれは立派な山でした。小ささで言うとNo.1かも知れません。南側は保育園、北側は小山公園という公園になっていました。

低山No.1は願成寺山:

そういうわけで、今回のチェックでは藤岡町の願成寺山(29.3m三角点峰)を栃木県で最も低い山と(自分だけで勝手に)認定!
まあ、それぞれ定義によりけりですね。

追記 2012-12-24

気になる森:
その後、ある森に気づいて、もしやこれはさらに低い山ではないかと気になって気になって。
東北道が渡良瀬川を渡って栃木県に入るとまもなく左手にこんもりとした森が見えます。高速道から見た限りどうやら周囲の田圃から数mほど盛り上がっています。山とすると願成寺山より低そうだ。
これは調べてみなければ。
地形図では佐野市高山町付近は20m等高線で囲まれています。低湿地帯の中でここだけが少し高いということです。そのため集落が形成されたのでしょう。
道が複雑でたどり着くのに苦労しましたが、そこは熊野神社でした。石柱の銘には下野国高山村とありました。高山村とは初耳ですが現在の高山町に当たることは想像できます。それにしても昔の村というのは随分小さかったことがわかります。
で、山だったかというと田圃から見ると確かに山のように見えますが、反対側に回ってみると高山地区の台地の端でした。残念ながら栃木県の低山No.1は願成寺山のままです。

    熊野神社

   本殿彫刻

ちなみに前回願成寺山で探した三角点ですが、最新の地形図では表記が消えています。

日本山名辞典の栃木県最低標高の山:
さらに気になる山が出てきてしまいました。
三省堂・日本山名辞典によれば栃木県の最低標高の山は磯山51mとしてあります。真岡の一等三角点(補点)のある磯山ではなく大平町の磯山です。日本山名辞典では山と認めるためには山名が地形図に記載されていることを条件にしているようです。この考え方はとうてい承服できませんです。お上の権威で山と決めるとは三省堂たるもの恥ずかしくないのか!(^_^;
とはいうものの日頃お世話になっている国土地理院+三省堂日本山名辞典ですから一応敬意を表して登って来ました。行程登り1分。(^_^;
いまは住宅地に飲み込まれてしまったような恰好ですがちゃんと樹林もあり岩場もあり展望もありました。頂上岩場に立てば眼下に永野川の清流、目を北にやれば大平山、晃石山、さらに遠く日光男体山、東には筑波山、なかなかの眺めです。
山頂直下には立派な諏訪神社があってきれいに掃き清められていました。
日本山名辞典版の栃木県で一番低い山は風格がありました。

   永野川堤防から磯山

   頂上岩場

   頂上岩場から大平山

   山頂直下にある諏訪神社