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木六山825.1m川内山塊を垣間見る
越後の下田(しただ)・川内山塊と言えばその核心部はエキスパートにとってもあこがれの山々だそうで、もちろん私などが足を踏み入れることなどとてもかないません。しかし辺縁の山々には我々ハイカーでも比較的容易に登ることができるいくつかの山があります。なかでも木六山はちょっぴり奥まった位置にあるため銀次郎、銀太郎、五剣谷岳、青里岳など山塊の核心部を間近に見ることができ、また豪雪に磨かれた壮絶な赤花沢の大スラブも見下ろせると言うことで、前々から出かける機会を狙っていました。
今回、足の揃った仲間の同行を得て山麓のチャレンジランド杉川に泊まり翌朝出発して登路にグシノ峰経由、下山に水無平まわりで周回コースを歩いてきました。

  木六山頂上の展望・銀次郎、銀太郎、八剣谷岳

【日程】 2001年5月20日
【山域】 川内山塊
【天候】 曇りのち晴れ
【地図】 1/25000高石
【アクセス】 北陸道三条燕IC(または磐越道安田IC)より国道290で村松町へ。村松公園脇を通って早出川沿いに走り暮坪で杉川を渡ってすぐ右折、そのまま杉川沿いに進むとチャレンジランド杉川に。
【駐車地】 チャレンジランド杉川から林道を進むと終点広場に十数台分
【コース】 チャレンジランド杉川=登山口−杉川取水小屋−大杉の休み場−草付きトラバース
−グシノ峰−水無平分岐−木六山−水無平分岐−旧分岐−石祠−水無平
−柴倉沢−登山口
(一般向き)

【メモ】 ヤマビルの恐怖:
日程も決めて準備を始めてからあちこちホームページの記録を読み回っているうち木六山にはとんでもない事態が待っていることが判明しました。出るんです。オバケ。違うってば! 出るんです、ヤマビル。うわぁー。思わず叫び声上げました、一斉に。と言ってもメールでてんでにぎゃーとかいやだーとか書き込んだだけですけど。
どうやら全員が嫌い、ヤマビル。こんなのに食いつかれたらぞーっとしてその場で卒倒してしまいます。でも卒倒してる場合ではない、その辺でひっくり返っていたら次々仲間のヒルが波状攻撃かけて来るじゃないか。どうしよぉ。
困惑しているうちに仲間の一人が「ヤマビル研究会」なる大まじめなのかふざけてるのか判然としないサイトを見つけだし、藁にもすがる気持ちでこれに頼ることに。http://www.tele.co.jp/ui/leech/top.htm
すると「ヤマビルファイター」というこれも大まじめなのかふざけてるのか判然としないヤマビル忌避剤を紹介していただきました。これでとりあえずは安心。やっぱり大まじめなサイトでした。
でも遭遇したくないなぁ。(^^;
それにしてもちょっと出費が。

豪雪地の山里を走る:
北陸高速道を三条燕で降りていきなり道を違え、下田・川内山塊をかすめ通る国道290号を走るハメになりました。一応国道というものの人家も少なく、これで雪に包まれる季節だったら慣れない我々では難儀してしまいそうです。
村松は小さいながら雰囲気のいい旧い城下町です。ここで最後の買い出しをしてから、いよいよ早出川に沿って山間部に分け入って行きました。早出川は雪解け水で川幅いっぱいとうとうと流れていました。
途中から杉川と共に早出川から分かれ右折、しばし山道をたどるとやっとチャレンジランド杉川にたどり着きました。木造りの立派な施設でキャンプ場、野外活動施設などが整っています。
ここを今夜の宿としましたが、部屋代2000円+宿泊1人1000円という費用にびっくり、さらに設備の素晴らしさにまたびっくり。調理器具は完ぺきに揃っていて、材料だけあれば何でも間に合います。ホールも部屋もお風呂も調理場も隅々まで清潔でこんな山奥なのにとまたまたビックリ。
まずは明日に備えヤマビルファイターで念入りに対策を施しました。恐怖に駆られなんと4人で10人分のスプレーをほぼ使い切ってしまいました。
それからゆっくり薬草湯に入ってから明日の期待を胸にささやかにビールを傾けました。

グシノ峰経由登山道:
草付きトラバースの急斜面
翌朝はあいにく雨上がりで山全体が湿気に包まれ、いかにもヤマビルが喜びそうな天候で明けました。
「ヤマビルファイター」をぐしょぐしょになるまでスプレーしたウエアにスパッツ、手袋、帽子と完全装備で勇躍出発。
登山口からは杉川沿いの道と水無平へ向かう道と分かれますが、我々は杉川沿いを登ることにしました。一旦下ってからすぐさまヒル危険地帯の沢沿いの杉林の中の道となります。いました、いました、ナメクジの弟みたいなヤツが。一瞬緊張。ですが、ヤマビルファイターの効用かあるいはまだその季節になっていなかったためかさいわい食いつかれることもなくやがて道は尾根の急登となり一安心。いえ、安心なんかしてはいられない、ここからつらい登りが延々と続いたのでした。大杉の休み場あたりまで来るとやや傾斜もゆるんで背後に毛石山が現れました。この尾根は天然杉の巨木があちこちに見られます。
途中、山菜取りのご夫婦に会いお話をしましたが、地下足袋、長靴のいでたちで雪を踏んで沢を登り次の沢を下るのだそうで、山靴で足下を固めた我々の軟弱さがなんとも情けないと苦笑い。収穫はまずまずだったようでリュックはパンパンでした。
足下の切れ落ちた草つきのトラバースを乗り越えグシノ峰に登ると眼前に木六山、足下に赤花沢大スラブ、その先に越後白山あたりが顔を出し始めこれぞ豪雪の越後の山だと嬉しい気分となりました。しばらく小気味よい岩稜をたどりましたがこのあたりがその日のハイライトでした。

大展望!木六山:
イワウチワ(拡大)
イワウチワの咲く最後の急登をこなすと水無平分岐、ここで右に進むと残雪とイワウチワの尾根に出てわずかで待望の木六山頂上です。
最高峰粟が岳が雪をいただいて立派でした。銀次郎、銀太郎、五剣谷岳、青里岳などの川内山塊核心部が雪を引いた山襞一つ一つまで手に取るように見えました。どの山も豪雪のため壮絶なスラブを落としてじつに雄大な姿です。白山、菅名岳、日本平、など周囲の山のその向こうにはなんと御神楽岳までうっすらと輝いていました。
ゆっくり展望を楽しみたいところですが大人数のお行儀の悪い一団が頂上標識や三角点周辺を占領して騒がしいので早々に退散して水無平目指して下山することにしました。

下山も手つかずの自然いっぱいの道:
ガイドブックなどには一旦銀次郎方面に進んでから捲き道を返すような記述がありますが今はその道は塞いであって、来た道を戻ってからそのまま尾根通しに進む新しい道が切り開かれました。
ムラサキヤシオやユキツバキの咲くなだらかな尾根からは登りに通過したグシノ峰が正面に見通せました。ここもすごいスラブを落として雄大です。
石祠の先からいよいよ急な下りが始まります。シャクトリ虫がやたらと多く糸を吐きながら無数に枝からぶら下がっていて、歩くと顔にまとわりついてわずらわしいことこの上ありません。見上げると葉っぱを喰われて枝が無惨な姿をさらしていました。これはこれでまた自然の摂理らしく、小鳥がせっせとこいつらをついばんでいました。子育ての最中なんですね。
水無平はずっとコース中の展望地から見下ろして来たのでおおよその予想はついていましたが、カヤトの平坦地です。ガイドブックに素晴らしいところだとよく書かれていますが、季節によるのでしょう、暑くて草いきれのするただの通過点でした。花の終わったカタクリが群生していました。たしかに開花期にはすばらしいでしょう。
ここから悪場峠に通じるコースが開かれているようで山頂で会ったグループはそこから来たと言うことでした。2時間弱で頂上に達するようです。
水無平からまた一気に下って柴倉沢に下り立つとあとは沢沿いをダラダラたどって駐車地に戻りました。


今回の山行はちょっと時期的に遅かったようで残雪も少なく頂上直下の雪田もほんのわずかでした。花もおおかたは終わっていました。とりわけカタクリとイワウチワの群生はものすごく、花の時期はどんなかと残念でなりません。
とはいえ、ほんの玄関口といえ川内山塊の一端に触れたことは大きな収穫でした。
【寄り道】 さくらんど温泉:村松にさくらんど温泉があります。早出川沿いの広々とした田園地帯にあって川風が心地よい清潔で快適な温泉です。イチオシ。
タオル、バスタオルが用意されていて手ぶらで寄れます。
ちなみに「さくらんど」は村松公園のさくらにちなみ、さくら・ランドから付けた名前なんだって。なんとかならんか。(^^;
【便利帳】

トイレ:チャレンジランド杉川