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カムイヌプリ(857m)

あいにくガスに包まれた頂上は冷たい風が吹き付けていました。でも壮絶な火口壁や周囲の深い森、途中のたおやかな尾根とそこから見下ろす北の大地、それぞれ思っていた以上に素晴らしい景観でした。

飛行機に乗ってまで北海道の低山に登ろうという気にはなかなかなれず、軽い財布をさらに空っぽにして出かけるなら、やはり大雪山などの全国区な山に足が向いてしまうということになります。
でも、今回は超割航空券が運良く買えましたので、ひとつあまりメジャーじゃない山に行ってみようかという気になったのです。ガイドブックの写真で見た広々とした笹尾根と話に聞く大展望に惹かれていつかはと思っていましたので、迷うことなくカムイヌプリにしました。

あいにくガスに包まれた頂上は冷たい風が吹き付けていてお目当ての大展望は得られず、寒さにたまらず早々に退散しましたが、壮絶な火口壁や周囲の深い森、途中のたおやかな尾根とそこから見下ろす北の大地、それぞれ思っていた以上に素晴らしい景観でした。
また写真で見慣れたのとは逆の方向から見る摩周湖は(陳腐な言い方ですが)とても神秘的で印象的でした。
結局、この日は一人のハイカーにも会うことなく、広大なカムイヌプリ一帯を独り占めでした。
 霧の中の今にも崩れそうなカムイヌプリ山頂

 摩周湖第1展望台よりカムイヌプリを望む
【日程】 2000年10月2日
【山域】
【天候】 曇り、霧
【地図】 1/25000摩周湖南部

【アクセス】 中標津空港から屈斜路湖畔に宿泊 弟子屈経由で摩周湖第1展望台
【駐車地】 展望台に有料駐車場 420円
【コース】 摩周湖第1展望台−西別岳分岐−カムイヌプリ(往復)
    登り2時間 下り1時間45分 一般向き
【メモ】 開陽台の大展望:
開陽台からの展望
牧場の向こう左奥に阿寒の山々、中央に西別岳、右にカムイヌプリ

開陽台という丘に行ってみました。あまり聞いたことないけど空港の近くだからちょっと寄ってみるか、というくらいのつもりでした。
ところが、これが感動的な大展望。阿寒富士、雌阿寒、雄阿寒、西別岳、カムイヌプリ、・・・(ちょっとなじみがないのでよくわかりません)、斜里岳、そして間近に高々と頭をもたげる武佐岳、さらに海を隔てて意外な近さの国後島、振り返るとなんという広さかとあきれるほどの大平野。こんな雄大な展望は見たことがありません。
ここ開陽台には親切な地元のボランティアが詰めていて、そのお一人に一通り見通せる山の名前を心得ている方がいらっしゃっていろいろ教えてくれ、見慣れぬ道東の山々を概ね頭に入れることができました。
ついでの話になりますが、ここは映画「家族」のラストシーンのロケ現場だそうです。中標津には他にも山田洋次監督の映画のロケに使われた場所がいくつもあって、どうやら監督が惚れ込んだ地だったみたいですね。

トドワラ
さらについでにトドワラへ:
ここまで来たら野付半島へも。(^^)
トドワラへは駐車場から1.5km、20分ほどです。途中、見事なハマナスの群生がありたくさんの実がなっていました。幾輪か名残の花も見られ、満開の時の見事さが想像されます。
トドワラにはアツケシソウも見られました。思っていたより狭く枯れ木もほとんどが倒れてしまっていて、ちょっと写真で見た印象とは違いました。むしろずっと手前で見たナラワラの方が迫力あったような気がします。
でも、季節はずれのせいか辺りには人影も少なく、この特異な風景を独り占め。

怪しい空の下、まずは摩周湖を半周:
翌早朝、摩周湖第1展望台駐車場に一番乗りして、ガスの中、カムイヌプリを目指しました。山頂はもちろん湖面さえも見えません。雨は大丈夫なようです。
道は良く踏まれていてしっかり刈り払いもされているので快適に飛ばせます。ただ、霧で草がびっしょりになっているせいで裾がぐしょぐしょ。雨具を付ける程でもなく、こんな時にはライトスパッツが便利ですがあいにく持っていませんので濡れるに任せてしまいました。
途中からガスが薄くなった瞬間にちらっと湖面がみえることもあり、とても幻想的でした。登路(といってもほとんど平ら。(^^; )は灌木帯になったり笹原になったりなかなか変化があり、すたすたと快調に足を運べます。しかし、晴れていれば雄大であろう右手の根釧台地も正面の西別岳も、もちろん目指すカムイヌプリもすっかりガスの中。

いよいよカムイヌプリの火口縁:
ナナカマドを前景に火口壁をのぞく
やがて西別岳分岐。というより西別岳へは真っ直ぐに道が続いていますから、カムイ分岐というべきでしょうか。カムイヌプリへはここからコースを左にとって一旦下降、ダケカンバの疎林を抜けるといよいよ火口縁を歩くことになります。
この辺りから紅葉が始まっていて明るい雰囲気に変わります。ナナカマドの赤い実が辺りを一層明るくしていました。
ルートの前半は火口の縁を通っていますので時々火口の底が見下ろせますが、深い樹林に覆われてとても火山とは思えない景観です。しかし見上げると頂上から一気に薙ぎている壮絶な火口壁に圧倒され、まぎれもなくここに激しい火山活動があったことがわかります。
ほどなく今日初めての登りらしい登りとなり、草つきになるとひょいと頂上に飛び出します。火口に向けて激しく崩れ落ちているためあまり端には近寄れません。やはりガスは晴れぬまま、ひゅーっと寒い風が吹き上げて、いかにも寒々とした北の山の一頂点にいる感激にひとときひたりました。
ガスの去るのを待つこと15分、一向にその気配もないまま寒さにいたたまれず山頂を後にしました。

不思議な標柱:
登りの時に気付いていましたが、平坦な尾根道の中程の登山道から10mほど離れた笹原の斜面に得体の知れないコンクリート柱がぽつんと立っていました。高さは1mほど、まったくここの風景にそぐわない無粋なコンクリートですが、こんな奥山で見る建造物というのも不思議な感じです。笹を踏み分けて行ってみると、側面に「子午線標」と彫ったプレートが埋められていて、上面には十字のマークが埋め込んでありました。ははーん、この十字のクロスが子午線の何度とかいうんだな。
ところが地形図を見るとここはなんとも半端な経緯度です。結局いったい何なのかわからずじまいでした。

展望台から晴れた頂上が:
平坦な尾根は往きも帰りも似たようなもので、快調に歩いていても意外に時間がかかります。ガスも少しは薄くなってときたま摩周湖の湖面や小島が見下ろせました。また反対側はダケカンバと笹の斜面が緩く緩く高度を下げながら根釧台地へと続いて、なんとも雄大な景観です。
やっとこさ展望台の駐車場にたどり着きましたが、なんとその瞬間さっとガスが晴れてカムイヌプリの頂上が姿を現しました。なんてこった! そこだけぽっかりと陽にかがやく頂上のとんがりは神々しくさえ見えました。

カムイヌプリ花図鑑(クリックで拡大)

カセンソウ

チシマワレモコウ
  トドワラ花図鑑(クリックで拡大)

チシマフウロ

ノコギリソウ

ハマナス